人に「YES」と言ってもらう伝え方には"型"がある 相手の認識を変えることでうまくいく

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【「自分ごと化」の型】を使うとどうでしょう。たとえば、「あなたの毎日のおうちごはんを、安く、おいしく支えたい。」というスローガンを掲げたりすれば、そのお店に来る人に自分ごとに感じてもらえると思います。

『伝え方図鑑』より引用
█ 【「もしも」の型】
『伝え方図鑑』より引用

好ましい可能性をイメージしてもらえるよう言語化する

この型で重要なポイントは、相手にとって好ましい可能性を最大限ふくらませてイメージしてもらうことです。たとえば、「もしも、今夜のおかずの相談に乗ってくれる店員さんがいたら?はい、います!お近くの店員にご相談を。」

このように、伝えなければ気づいてもらえなかった可能性を、イメージしてもらえるよう言語化するのが大切です。

█失敗例

さて、型を使ったうまい事例を見たところで、ついつい陥りがちな失敗例も見ていくことにします。Hさんが自力で考えた、惜しい/よくない例です。

「ただの“スーパー”ではありません。“スペシャル”なお店です。」

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これは、スーパーとしての認識を変えたいと思ったHさんが「スーパー」という英単語の響きに着目してしまったことが失敗の原因です。

本人はダジャレがうまくいったと思っていますが、これでは、本質的な別の価値への気づきがありません。表層的な言葉の表現を変えること自体が目的になってしまっていて、先述した例のように、「小さい」という弱点を別の価値に翻訳する作業ができていないのです。

「あなたにとって、最高!のお店になってみせます。」

これは、Hさんの熱い思いが出すぎてしまった例です。「もっと感動するスーパーへ。」とか「あなたにとって、家族のようなスーパーになりたい。」とか、こちらとしての理想をそのまま言葉にして伝えたい気持ちはわかるのですが、こういったアプローチは、受け手にとってはあまり価値として感じられません。

これは、Hさんをはじめとするスーパー側が考えた、信憑性のない曖昧な理想を伝えているだけで、受け手にとっては自分ごと化できないからです。最高のお店を目指す、という宣言だけでは相手にとって価値にはならず、相手の認識を変えたことになっていないんですね。

という失敗例を見ていくと、この「相手の認識を変える」というテーマがなかなか奥深いことがご理解いただけると思います。実はこの考え方は、広告のキャッチコピーの基礎とかなり近い構造です。商品の特徴をそのまま伝えるのではなく、もっと良く見えてくるような視点を与える、という発想です。つまり広告のプロが使っている技術でもあるので、使いこなせるようになったらかなりの「伝え方上手」になれると思います。

井手やすたか 博報堂ケトル コピーライター/クリエイティブ・ディレクター

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いで やすたか / Yasutaka Ide

1980年生まれ、佐賀県出身。2004年東京大学経済学部卒業、博報堂に入社。マーケティング戦略プランナーを経て、2008年からコピーライターに転身。2022年より、出身地・佐賀市の情報発信強化アドバイザーに就任。国内外の主要な広告賞を20種以上受賞。Cannes Lions、AdFest、D&AD、NY Fes、LIA、Spikes Asiaなどの国際賞や、TCC新人賞/TCC賞ファイナリスト、ACC、日本ネーミング大賞、PRアワード、朝日広告賞、広告電通賞、グッドデザイン賞ベスト100、ギャラクシー賞、ユーキャン新語・流行語大賞などの国内賞も。

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