爆増する「ロピア」にも負けないスーパーの正体 従来スーパーが切り捨てた生鮮ノウハウを強化

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こうした時代の流れを受けて、かつての生鮮専門店が持っていたノウハウは、個人商店の衰退と共に絶滅寸前にまで追い込まれていた。

しかし、生鮮専門店の中には生鮮管理ノウハウをスーパーのチェーンオペレーションとは異なる仕組みで多店舗化する企業もいた。それが肉のユータカラヤ(ロピアの前身)であり、タチヤ(青果店出自)であり、角上魚類(大規模鮮魚チェーン)などであり、こうした専門店チェーンにおいて、きめ細かい生鮮管理ノウハウを多店舗展開できる企業も現れるようになった。

こうした企業の中から、自らがスーパーとして展開したり、アライアンスによりスーパーと合体することで、新たなイノベーションを起こすものも現れた。それが、ロピアであり、バローデスティネーション・ストアなのであろう。

生鮮強化型チェーンストアの手法が突破口を開く

チェーンストア同士の同質化競争に陥りつつある今、チェーンオペレーションに加えて、生鮮管理ノウハウを駆使した売り場作りをすることが、大きな差別化要因となる。人口減少で市場が縮小していく環境下、チェーンストアによる同質化が進んだ今こそ、こうした生鮮強化型チェーンストアの手法が突破口を開くひとつの解となるはずである。

唐突だが、この話を書いていて、昔、生物の授業で習った「ミトコンドリア」のことが頭に浮かんだ。動物などが動くためのエネルギーは、細胞内に存在するミトコンドリアが作り出しているのだが、このミトコンドリア、元々は別種の好気性細菌だったのに、捕食されたか何かのタイミングで、細胞が取り込んで共生している、という関係らしい。

異物を取り込んで消化してしまうのではなく、共生ができれば、さらに発展するという過程がなんとも不思議なのだが、生物の歴史の中では割とよく起こっているのだという。生鮮専門店を取り込んで(どっちが主体かはさておき)、上手に共生するスーパーは、きっと次のステージに進化できる、そんな気がするのである。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、慶應藤沢イノベーションビレッジでベンチャー支援活動を開始、近年は地方創生支援活動も実施中。並行して、流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+ITなどで執筆、連載中。

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