「アップルのAI戦略」が競合とあまりに違う事情 ChatGPTと"連携"したアップルらしい理由

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では、なぜ数ある対話型AIの中からChatGPTを選んだのかというと、アップルは常にそれぞれの業界でのトップブランドと組むことを重視しているからだ。

例えばApple Watchのバンド作りでもファッションの分野ではエルメスと、そしてスポーツ用バンドの分野ではNikeとコラボをしている。これと同じ考えで、アップルがAI処理のトップブランドと認めたのがChatGPTを提供するOpenAIだったというわけだ。

ChatGPTを「下請け的」に利用

個人情報を利用したよりプライベートな要求は自社開発のAIで応え、より専門的な知識が必要とされる要求はChatGPTと連携する。この2つのAIを活用したハイブリッド型のアシストの構造は、ちょっと複雑に見えるかもしれない。しかし、実はユーザーが要求を出している相手は常にApple Intelligenceで、必要な時だけChatGPTを下請け的に利用するだけである。

またハイブリッド型にしたからこそ、アップルが常に心がけてきた徹底したプライバシー保護の姿勢を堅持することができ、より安心してアシストを頼めるという信頼にもつながっている。

他社が「便利さ」や「AIの凄さ」を売りにしたAI統合を行なっているのに対して、老舗IT企業であるアップルは「信頼されるブランド」であり続けることを常に最優先しており、多少「便利さ」を犠牲にしてでも「信頼」を優先させる設計になっている。

それがよくわかる事例の1つが、過去にパソコン画面に表示された情報をOSがすべて記録していて、「昔どこかで見た赤いシャツ」というだけで、どこで見たのかを教えてくれるような機能の搭載で、アップルはプライバシー保護重視の設計思想の観点からもそうした機能は提供していない。

「便利」をとるか「安心」を取るかは、使う人によっても意見が分かれるところだろう。この設計思想の違いが、今後、世の中にどう受け入れられるかは興味深いところだ。

林 信行 フリージャーナリスト、コンサルタント

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はやし のぶゆき / Nobuyuki Hayashi

1967年、東京都出身。フリーのジャーナリスト、コンサルタント。仕事の「感」と「勘」を磨くカタヤブル学校の副校長。ビジネスブレークスルー大学講師。ジェームズダイソン財団理事。グッドデザイン賞審査員。「iPhoneショック」など著書多数。日経産業新聞「スマートタイム」、ベネッセ総合教育研究所「SHIFT」など連載も多数。1990年頃からデジタルテクノロジーの最前線を取材し解説。技術ではなく生活者主導の未来のあり方について講演や企業でコンサルティングも行なっている。

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