例えばスマートフォン。iPhoneよりもはるかに前に出ていた他社製の中には、本来パソコン用に作られていたOSを単純に片手に収まる携帯電話の画面で動くようにしただけの単純発想で作られたものなどが出ていた。小さな画面に表示される小さなウィンドウやメニューに、神経を集中させてペン先を合わせ操作するというものだ。
対してアップルは、指先で操作するスマホはどうあるべきかを根本から考え直してiPhoneを生み出し、まるでiPhone以前にはスマホが存在していなかったかのような印象すら与えるほどの大成功を収めている。
今、アップルはこれと同様のことを、今後重要になるAI技術のOS統合でやろうとしている。多くのOSが、単純にAIとの対話用ウィンドウをくっつけただけというアプローチで統合を行っている。これはユーザーが、AIにどんなことを頼めばいいかを、すでに知っていることが前提のOS設計だ。
これに対して、Apple Intelligenceは、そもそもAIにどんなことが頼めるかを知らない人でも、AI機能が必要なときに必要な場所に表示されるという設計を目指している。
AIに何を頼めばいいかがわからない人に配慮
例えばAIが得意とする作業に文章の校正や要約がある。
ほかのOSではワープロの文字入力画面の脇に表示される対話型ウィンドウに「要約して」だったり、「もっと丁寧な言い回しに書き直して」といったプロンプト(言葉による説明)を書く必要がある。
これに対してMacでは、人間があらかじめ書いた文章を選択し、Apple Intelligenceを起動すると、「推敲する」「よりプロフェッショナルに見える表現に直す」「(選択した文章を)要約する」「説明する」「要点を箇条書きにする」「内容を元に表を作る」など、ユーザーが最もよく行うであろう文章操作がメニューとして現れる。
例えば「子供でもわかるように書き直す」など、より詳細な要求がある場合のみ「説明する」ボタンを押して、その要求を説明すればいい設計だ。
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