実はこれはアップル以外の広告を主な収益源とするIT企業には、なかなか取りづらい戦略である。というのも、広告を収益源とするIT企業の多くが、ユーザーの個人情報に基づいて、より効果がある広告を表示させることで利益を得てきたからだ。
一時は行きすぎた個人情報獲得合戦を反省して、他社もプライバシーへの配慮を謳いはじめてはいるが、広告収入に頼っている以上、アップルより厳しいプライバシー保護は期待しにくい。
Apple Intelligenceの一番の売り
アップルはIT業界では希少になった製品の売り上げを生業にした伝統的製造業だからこそ、個人情報に頼らないビジネスが可能で、このアドバンテージを最大限活かすべく「プライバシー保護」を声高に訴えている。
ハードウェアやOSを作る際にも、「使用するデータを最小限に留める」「(通信を行わず)機器上で処理する」「機器上で何が行われているかについて透明性を保ち、ユーザーにプライバシー情報の管理権限を渡す」「しっかりとしたセキュリティー技術でプライバシー情報を守る」という4つのプライバシー保護に関するデザイン原則を設けて設計しているため、基本的にアップル製品に預けた個人情報は、ユーザー以外には漏れることがなく、アップルもこれを見ることができないという認知が広まっている。
Apple Intelligenceはこの信頼できるプライバシー設計の上に立脚したAI機能であることが実は一番の売りになっている。
もちろん、しっかりとプライバシー保護をしているからこその制約もある。
通信に頼らない機器内の処理はプライバシー保護に加えて、反応が速くなるというメリットもあるが、ネットワークの向こう側にある大型コンピューターによる処理と比べると、どうしてもできることが限られてしまう。
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