多忙な人が気づくべき「怠けてはいけない」のウソ 思い込まされている価値観は本当に正しいのか

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何年も、私はひどい生活パターンで生きてきた。朝から5〜6時間、休憩も取らずに働いて、片っ端から業務を処理していく。

この時間帯は、メールの返信やレポートの採点に猛烈に集中していて、軽食をつまむどころか、席を立って少し歩くのも、トイレに行くのも忘れていた。誰かの邪魔が入れば、イライラしながら相手を睨みつける。こうして5時間ほど過ぎた頃には、空腹とイライラと精神的消耗でもう動けない。

こんなふうに超生産的でいられるのはいい気分だった。前日の夜に考えて不安になっていた「やることリスト」のタスクを全部片付けられる自分が好きだった。そう思うと短距離走のように全力で凄まじい量の業務を処理できた。

怠惰な時間を過ごしたあとの「罪悪感」

だけど、そんな働き方をしていると、その後、使い物にならなくなる。午後は生産性ゼロに等しい状態で、SNSを何時間もただ眺めているだけだった。終業後はベッドに倒れ込む。暗い部屋でポテトチップスを食べながらネット動画を見る以外のエネルギーは残っていない。

こうして数時間、「充電」をすると今度は、時間を有意義に使えなかった罪悪感が押し寄せてくる。

「友達と出かければよかったのに」「なんで執筆しなかったんだろう」「どうせなら健康的で素敵な晩ごはんを作ればよかった」ー。

そうして、翌日にやるべきことを考えてストレスに襲われる。そしてまた翌朝になると、罪悪感から働きすぎて疲弊、というサイクルが始まるわけだ。

これが身体によくないのは当時もわかっていたけれど、抜け出せずにいた。たとえ疲労感がひどくても、大量のタスクを短時間で完了する快感は手放せなかった。私は「やることリスト」に完了のチェックを入れるために生きているようだった。

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