「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由

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ジャーナリストの佐々木俊尚氏は任天堂の組織・マネジメントにこそ学ぶべきことがあると語る(写真:akeuchi masato/PIXTA)
2000年代初頭低迷した任天堂はいかにして起死回生を遂げることができたのか。復活の要因をゲームやクリエイターにスポットライトを当てて考察するものは多いが、任天堂の組織・マネジメントにこそ学ぶべきことがあるとジャーナリストの佐々木俊尚氏は語る。
崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男』の著者レジー・フィサメィ氏が持ち込んだ「アメリカ式経営」のある要素が任天堂の飛躍の背景にあるのではと佐々木氏は指摘します。「日本発・プラットフォームビジネス」という観点から任天堂の強さの秘密に迫った前編に続き、本書の読みどころを聞いた。

誰が管理職になるべきか

本書はマーケターとしてキャリアを積みアメリカ任天堂の社長兼COOとなった著者による書ですから、純粋にゲームの話を読みたい人には、ひょっとしたら物足りないかもしれません。ただ、低迷していた任天堂がいかに起死回生を遂げたのかという会社経営、組織のありようの実録は、それはそれで非常に興味深く、学ぶべきことの宝庫だと思います。

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特にここで取り上げたいのは、社内の横のコミュニケーションを活性化したという話です。著者のレジー・フィサメィ氏はアメリカ任天堂に入社した直後から、財務、IT、事業、特許、オペレーション製品開発などあらゆる部署のリーダーと直に会って話をしたといいます。そして、それまでは厳然として存在していた部署間の壁を壊し、「チームワークのカルチャー」を構築しました。

部署間のコミュニケーション不全は、あらゆる企業で生じうる課題です。本書の中でも指摘されていることですが、たとえば「ものを作る人たち」と「ものを売る人たち」とで自由闊達に議論できる企業風土がないために、的はずれなマーケティングを打ってしまう。同様の課題は、業種を問わずあらゆる企業で起こり得ます。

昭和のころは、他部署の人と喫煙室で一緒になったり、仕事の後に飲みに行ったりする機会が多く、横のつながりが盛んでした。たとえば反目していた製品開発部と営業部が酒席で初めて気脈を通じ、以来、強い協力関係が築かれたといったエピソードは至るところにあったはずです。

ところが、バブル崩壊後の平成の時代ではコスト削減が推奨されるようになり、経費と一緒に人間関係も削られていきました。みな懐にも心にも余裕がなく、おまけに残業続きで、仕事の後に飲みに行く時間も元気もありません。朝、出社し、ひたすら自分の仕事をこなしたら、家に帰ってバタンと寝る。2000年代に入ってからこの傾向は強くなりました。

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