「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただし組織のトップに立つ人ともなると、より複合的な能力が求められます。まず、ビジョンがあること。しかしビジョンさえあればいいわけではなく、その上に管理・調整能力や実務能力も兼ね備えていなくては、リーダーシップを発揮し、機動力高く組織を運営していくことは難しいでしょう。

アメリカのすべてを賛美するわけではありませんが、アメリカ企業にあって日本企業に欠けがちなものは機動力です。昔に比べれば変わってきているとはいえ、日本企業はまだまだ「和を以て貴しとなす」的なマインドが根強い。そのために、トップが大胆で素早い経営決断を下すようなリーダーシップを発揮していないという難点があります。

もちろん、なかには大胆な方針転換をしたことで成功した例もあります。写真のフィルムから化粧品や医療機器に方針転換した富士フイルム、家電からBtoBのインフラ事業へと方針転換した日立などは、その代表格と言えます。

ただ、これらは数少ない成功例に過ぎません。全体として見ると、やはり機動力の欠如はいまだに日本企業の通弊であり、それがこの30年、日本の産業界が衰退してきた一大要因であることは間違いないでしょう。

翻って任天堂ですが、本書を読んでいると、フィサメィ氏が本社の役員たちと対立し、説得する場面がたびたび出てきます。フィサメィ氏は、おそらく本社からするとかなり異質な支社長だったと思われますが、その彼をアメリカ任天堂のトップに据えたことで、任天堂本社にも変化があったことは想像に難くありません。

本書には書かれていませんが、従来の日本式経営に、フィサメィ氏を通じてアメリカ式経営が流れ込んできたことで、組織の機動力が上がった。それもまた、この20年の任天堂の飛躍の背景にあると考えられるのです。

日本企業に求められる「アメリカ的経営者」

国際競争を勝ち抜くには機動力が必要不可欠である。これは、日本企業が「失われた30年」で得てきた手痛い教訓でしょう。まだまだ実態としては追いついていないところがあるとはいえ、問題意識はだいぶ共有されてきていると思います。

日本企業は従来、ボトムアップ型ですが、機動力を高くするには、ある程度、トップダウン型の組織にしていく必要があります。トップが決断を下し、強いリーダーシップをもって下を従わせるくらいでないと、時代背景や消費者ニーズの変化に素早く対応していけません。いかに機動力の高い組織を作っていくかという点では、おそらく、こうしたリーダーシップの欠如が日本企業の最大の課題です。

次ページ組織を再生させるリーダーの姿
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事