「V字回復企業」と低迷企業、トップの決定的差 日本企業に「強いリーダー」がいない根本理由

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ちなみに10年ほど前にOECDが行ったリサーチでは、中卒の日本人の国語力と数学力は、大卒のイタリア人・スペイン人よりも高いという結果が出ており、一般的な労働者の質は日本が一番高いとされています。たしかに基礎学力がある上に真面目で律儀で一生懸命、コロナ禍でリモートワークになったときも、日本の労働者の多くは、サボらずにちゃんと仕事をしました。

ところが、これほど勤勉な人たちが、出世してマネジメント側になった途端に「昼行灯」のごとく存在感を失ってしまう。日本の風土として「出る杭は打たれる」ことも否めません。みな口では「リーダーシップが必要だ」と言うのに、いざ誰かが少しでもリーダーシップを発揮しようとすると、こぞって足を引っ張るところがある。政治の世界でもビジネスの世界でもそうです。“日本のマーク・ザッカーバーグ”や“日本のビル・ゲイツ”が誕生しないのは、このように、強い意志を持った人がリーダーシップを発揮できる土壌に乏しいからでしょう。

本書を読んで、低迷している組織を再生させるリーダーの姿についても深く考えさせられました。

アメリカ任天堂社長に学ぶべきリーダー像

本書の最後のほうで、フィサメィ氏は「信念を貫くことの大切さ」を説いています。全体を通じて「この上司の下で働くのは大変そうだな」という印象を抱いてしまいますが、それも信念を貫くというフィサメィ氏の思いの強さゆえでしょう。

また「自分の身に起こることは、すべて自分の責任である」というフィサメィ氏の考え方からは、いかにも新自由主義的な自己責任論を感じますが、これは「失敗した終わり」ではなく、状況に応じて新しいプランを考えて再チャレンジする柔軟性、さらには「これ」と決めたことを続ける持久力とセットになっています。

こうしたリーダー像はフィサメィ氏のみならず、実績を出しているアメリカ企業のトップに共通しているものでしょう。だからこそ突破力があり、新しいビジネスを推し進めることができる。失敗しても諦めずに再チャレンジできる。

何でもアメリカに染まる必要はありませんが、フィサメィ氏の語りからうかがわれるアメリカ的経営――機動力、トップが信念を貫く強さ、柔軟性、持続性は、日本企業にも必要でしょうか

(構成:福島結実子)

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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