救急車「不適正利用」解決に"利用料"徴収はありか 「入院しない軽症者の搬送7700円」始めた地域も
社会医療法人慈生会等潤病院(足立区)は、2023年度に2786台の救急搬送を受け入れた。
同院の伊藤雅史理事長・院長は、高齢者の急増で救急搬送を受け入れにくくなる事情について、このように説明する。
「高齢者はそれほど重症でなくても、入院後に『廃用症候群』といわれる日常生活での自立度が低下した状態になることが少なくない。自宅に戻っても単身のため家族などによる介護が期待できなかったり、単身でなくても老老介護であったりするため、在宅復帰が困難になり入院が長引く」
その結果、患者が病院に“滞留”する状態になり、新規の救急搬送者を受け入れにくくなるという。
救急車の有料化は可能か
こうした救急搬送の増加を何とかすることはできないものか。そういう点で、今から約10年前、救急車有料化の議論が盛り上がったことがある。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会が2015年6月にとりまとめた意見書(建議)で、「(救急出動の急増を容認し続ければ)真に緊急を要する傷病者への対応が遅れ、救命に影響が出かねない」として、諸外国で救急出動を有料化している例を引き合いに出しながら、救急車の一部有料化を提案した。
ただ、実現には有料には至っていない。
重症者を無料にして軽症者を有料にする案に対して、
▽誰が軽症と判断すればいいのか▽料金の徴収は病院が担うのか、救急隊が担うのか▽生活困窮者が救急要請を躊躇したことで重症化してしまうのではないか
――などの意見が噴出し、現場でのトラブル発生などを懸念して、議論は進まなかった。
ただ、海外で救急車を有料化している事例はある。代表的なのが、アメリカのニューヨークやフランスのパリだ。
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