救急車「不適正利用」解決に"利用料"徴収はありか 「入院しない軽症者の搬送7700円」始めた地域も
ニューヨーク消防局は2023年5月、近年のコスト上昇と救急隊員の賃上げのため、基本料金を900ドルから1385ドルに引き上げた。また、傷病者の重症度により料金を変えているほか、搬送距離に応じて1マイルごとに20ドルが必要になる。このほか、酸素投与には66ドルなどオプション料金もある。これらの料金は、直接か保険経由で徴収している。
パリでは緊急度に応じて、救急搬送の際はSMUR(救急機動組織)やBSPP(パリ消防隊)、民間救急車のいずれかを利用する。
SMURは300ユーロが基本料金で、距離などに応じて加算される。BSPPは原則無料だが、不適正利用をすると懲罰的な料金を徴収される。民間の救急車は固定料金65.51ユーロに、5キロ以下・10キロ以下・15キロ以下・20キロ以下ごとの定額料金が加算され、これらを上回ると、1キロ当たり2.44ユーロ加算される。
日本でも「費用を徴収する」試み
有料ではないものの、国内にも似たような取り組みが行われているところがある。
三重県松阪市の松阪総合病院、松阪中央総合病院、松阪市民病院は、2024年6月から救急搬送された患者で入院に至らなかった場合、「選定療養費」として7700円を徴収することを始めた。
選定療養費とは国が認めている制度で、都道府県知事が「地域医療支援病院」と承認している200床以上の病院を、紹介状なしで受診した患者から徴収するものだ。
松阪市はこの制度を、救急車の適正利用を促すために活用する。
医師で、市立伊勢総合病院(伊勢市)院長や、松阪市民病院総合企画室副室長を歴任した世古口務氏は、「救急車をタクシー代わりに使うなどの不適正利用を抑制し、本来救急医療が必要な患者に対して、適切に医療を届ける意味で意義ある一歩だ。不適正利用が減れば、救急隊員だけでなく病院スタッフの負担が軽減されるので重要な施策だ」と述べる。
救急搬送された重症でない患者への選定療養費の徴収は、一部の公的病院や自治体病院ですでに実施している。
救急搬送の急増は、患者を受け入れる病院スタッフの過重労働にもつながっている。今年4月に勤務医の時間外労働の上限を規制する、「医師の働き方改革」がスタートした。松阪市の新たな取り組みで、救急車有料化議論が再燃するかもしれない。
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