「怪しい数字」にまんまと騙される人に欠けた視点 「数字は嘘をつかない」と「信頼できる」は別問題
一般論として、ビジネスの世界には「販売数は減ったけれど売り上げは増加した」といった事例はいくらでもあります。金額ベースの数字と個数ベースの数字は、根本的に違う数字と理解するべきでしょう。
「数字は嘘をつかない」というけれど
このような視点を持つと、世の中にあるいろんな数字の表現に対して敏感になってくるはずです。
あなたのもとに、「ウチの部門は昨年に比べて生産性が2倍になりました!」という報告が届きました。さて、いったい何が2倍になったのでしょうか。
この部門の生産性という数字とあなたの認識する生産性という概念がまったく異なるものだとしたら、当然ながらこの発言を聞いて「それはすごいですね」と思ってはいけません。
「この製品はリニューアルしたことで効果が5倍に!」というよく見聞きするフレーズがあります。しかし、これはいったい何が5倍になったのでしょうか。「効果」の定義を確認しないことにはこの発言を信じることができません。
たとえばリニューアル前は利用客からランダムに100人を選定し、効果を実感した人の人数を調査した結果が10名しかいなかったとします。「効果を実感した人」の割合は10%です。
リニューアル後、調査の設計を意図的に変え、超優良顧客から2名だけを選んで同じ調査をした結果、1名が「効果を実感」と答えたとします。すると「効果を実感した人」の割合は50%に増加します。
もしこの数字を「効果が5倍」と表現しているとしたら、あなたはどのように感じるでしょう。私であれば、「超優良顧客ふたりに聞けば、そりゃひとりくらいはポジティブな感想を言うでしょう」と感じます。
あまりに極端な例であり、まるでペテンのような話です。しかし人を騙す数字とはたいていの場合このようにして作られるもの。だからこそ定義を確認することさえ怠らなければ、私たちが日常生活やビジネスシーンで目にする数字に間違った意味づけをする可能性は激減します。
多くの人は「数字は嘘をつかない」とおっしゃいます。その通りだと思います。しかし数字自体は嘘をつかなくても、数字を示す側が相手を騙そうとしている可能性はあります。「100」という数字は揺るがない客観的な情報ですが、その「100」にどう意味づけするかはあくまで読み手が決めるものです。あえてひねくれた視点を持ち、数字の定義を確認する習慣を身につけましょう。
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