「怪しい数字」にまんまと騙される人に欠けた視点 「数字は嘘をつかない」と「信頼できる」は別問題
まず、先ほどの発言には2つの「ツッコミどころ」があります。まず、「不快かどうかはあくまでその人の感覚によるものだ」といった類のツッコミが考えられます。少しばかりひねくれた視点と思われる方もいるかもしれませんが、個人的にはもっともな指摘だと納得します。
騙されたくなければ「定義」を確認
ただ、もうひとつ、より重要なツッコミが考えられます。
「そもそも、不快指数の定義は?」
というツッコミです。
この指摘ができる人は、そもそも不快指数の定義がわからなければ、たとえその数値が高くても、意味づけや評価などできるわけがないと思っています。数字の定義がわからないのにその数字に意味づけをしてはいけません。
では不快指数の定義を確認してみましょう。複数の定義があるようですが、一般的には次の定義が用いられます。
すなわち、不快指数とは気温と湿度という2つの数字で決まるものであることがわかります。しかしそれは裏を返せば、気温と湿度以外のものはまったく考慮されていない数値であるということです。
たとえば、気温や湿度が高かったとしても、心地よい風が強く吹いていたらどうでしょうか。不快どころか、「過ごしやすい」と感じる人もいるかもしれません。
つまり、不快指数が高いからといって不快だ(過ごしにくい1日だ)と決めつけるのは早計ということになります。
これもまた少しばかりひねくれた視点と思われる方もいるかもしれません。しかし数字に騙されることを回避するためには、これくらいひねくれた視点を持ってちょうどよいと考えています。
不快指数以外の例も挙げて考えてみましょう。ビジネスでよく使う数字として、在庫回転率という数字があります。小売業などでは馴染みがある数字です。
「最近は在庫回転率がいい。在庫数の管理はうまくいっている」
このようなもっともらしい発言ほど、騙されやすいものです。もしこのような発言を聞いても鵜呑みにしてはいけません。
まずは在庫回転率の定義を確認します。一般的な定義は次のとおりです。
ここで重要なのは、在庫回転率という数字には2種類あり、それらは必ずしも一致しないということです。金額ベースの在庫回転率はよかったとしても、個数ベースも同じとは限りません。だとすると、在庫数の管理がうまくいっていると簡単に認めるのは早計ではないでしょうか。
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