どこまでドッキリ?「全力!脱力タイムズ」の裏側 「渡部復帰」「アンタッチャブル復活劇」はこうして実現した

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なんと、この回の台本を担当したカツオ氏にも実は、本当にアンタッチャブルが復活する企画であることは知らされていなかった。台本には偽の山崎氏として、最初に俳優の小手伸也氏が出てきて、その後にコウメ太夫氏が出てくると書かれていた。

身内へのドッキリが『脱力』の真骨頂

「僕と寺田さんはまったく知らなくて、放送前日にラリータさんから『絶対に見てください』と連絡があって。いざオンエアを見てみたらすごいことが起きてました。ほとんどのスタッフは有田さんとラリータさんに騙されたんだと思いますよ。オンエアを見て感動しすぎて泣きました」(カツオ氏)

身内にまでドッキリを仕掛ける、これぞ『脱力』の真骨頂といっていいかもしれない。

「収録当日、担当ディレクターに本番5分前くらいに『最後のコウメさんの代わりに山崎さんが出てきます』と伝えました。リハーサルはコウメさんでやっていて、山崎さんは奥でスタンバイしてたんです」(ラリータ氏)

この「復活劇」は反響を呼び、2019年12月度ギャラクシー月間賞を受賞した。この賞の選考委員で、ライターの戸部田誠(てれびのスキマ)氏は次のような選評を残している。

「コント番組を作ることが難しいと言われている時代に、くりぃむしちゅーの有田哲平が、ニュースキャスター『アリタ』に扮した“報道番組”の設定で、全編にわたって精緻に作り込んだ笑いに挑戦している稀有な番組だ。(中略)ずっと『フェイク』をやり続けたこの番組自体の歴史が振りになったサプライズ。それを事前告知まったくなしに行ったのも粋だった。彼らが売れていない若手時代から強い絆があった有田の番組だからこそ実現したであろう復活に、彼らのリアルな感情が溢れ出ていた」

ちなみにラリータ氏によるとこの「アンタッチャブル復活劇」は、最初から有田氏との話し合いで「事前には絶対に言わないこと。そうじゃないと見ている人がワクワクしないし、オンタイムで見てくれた皆さんを大事にしたい」という条件があったという。どこまでも予測不能なTVショーを展開する『脱力』らしい裏話だ。

日本バラエティー界の特異点ともいうべき独自のスタンスを築くことに成功した『脱力』は、こうして生存競争が激しいテレビ界において特別なオンリーワンの存在感を放ち続けている。

後編につづく)

名城ラリータ:テレビディレクター。1976年沖縄県生まれ。日本大学芸術学部卒業後、2000年にフジクリエイティブコーポレーション入社。過去に『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』『ココリコミラクルタイプ』『OV監督』など人気番組を経て、現在は『全力!脱力タイムズ』『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ)『有田哲平の引退TV』(ABEMA)などを担当している。
寺田智和:放送作家。1977年千葉県生まれ。中央大学理工学部在学中から(株)ライターズ・オフィスに所属。過去『リンカーン』『ひみつの嵐ちゃん』などの番組に携わり、現在は『バナナサンド』『ラヴィット』『ジョブチューン』(TBS)『全力!脱力タイムズ』『ミライモンスター』(フジテレビ)『プレバト』『日曜日の初耳学』(MBS)などを担当している。
カツオ:放送作家。1980年、東京都荒川区生まれ。2000年、早稲田大学在学中に、劇団「盗難アジア」を旗揚げ。2005年まで、劇団主宰・俳優としても活動。2001年に演劇活動と並行して、放送作家の活動も始め、現在に至る。過去、年間600本の企画書を書いた実績もあり、自称・企画書渋滞系放送作家。現在は『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)、『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京系)などのレギュラー番組・SNS映像コンテンツを担当。またバスケットにも精通し、バスケ系SNS等にも参加。
ジャスト日本 ライター

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じゃすとにほん

ライター、プロレス考察家。1980年福岡県出身、和歌山県在住。プロレスからビジネスジャンルまで、幅広く執筆活動を展開。現在アメブロで「ジャスト日本のプロレス考察日誌」を更新中。 著書に「俺達が愛するプロレスラー劇場 Vol.1」(ごきげんビジネス出版)「インディペンデント・ブルース」「プロレス喧嘩マッチ伝説」(いずれも彩図社)ほか多数。

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