家族は夫と妻と高校生になる息子の3人暮らし。仕事帰り、学校帰りにくつろぐはずのリビングにその場所はない。モノの上に腰かけるか、モノをかき分けて座るスペースを確保するしかない。
壁際には収納家具が置かれているが、どれもキャパオーバーだ。入りきらなくなったモノたちが床になだれ込み、家族が食事をするローテーブルも化粧品など細々とした生活用品で潰されてしまっている。
「掃除なんて自分ですればお金もかからない。自分でやれよ。怠けんなよ」
夫にはずっとそう言われてきた。夫婦関係は悪くはないが、夫は片付けに関して無関心になりつつある。夫の気持ちもわかる。収集癖があり、片付けられない相手に「片付けろ」と言ったところで口論になるだけだ。だったら、何も言わずに見て見ぬふりをしておいたほうがいい。
もちろん、妻だけに任せず、夫も一緒に片付けをすればいいじゃないかという意見もあるだろう。
片付けとは「整理」ではなく「捨てる」こと
今の家に住み始めたのは約15年前。当時から部屋はモノだらけだったというが、どうしてそうなってしまったのだろうか。片付けの依頼主である女性が話す。
「この家に引っ越してきたとき、私は妊娠10カ月でした。子育てでなかなか片付けられなくて、主人も土日いないことが多かったんです。子どもの面倒を見ながら片付けをするのは本当に大変で、どんどんモノが増えていって、置き場所がどんどんなくなって。汚い部屋を見ていたら何をしたらいいかわからなくなっちゃうんです」
当初から夫は協力的ではなかったようだが、今回の片付けが行われた日も不在だった。
そんな生活が続き、10年ほど前から本格的に部屋はモノであふれ返るようになった。女性は「何とかせなあかんって10年以上前から思っていた」と話す。それだけの長い期間を経て、どうして片付けを決意するに至ったのか。
「子どもの成長に伴って、プライバシーを確保してあげたかったんです。息子は自分の部屋がなくても大丈夫なんだろうなとも思うんですけど、自立を促すためにもやっぱり必要なのかなって」(女性)
今の状態になってしまった理由は本人もわかっている。それは、自分がどうしてもモノが捨てられない性格かつ収集癖があるからだ。
現場に入ったスタッフは計6人。玄関付近は、消費期限が切れた食品など一目で「いらない」と判断がつくモノが多いため、作業はスムーズに進んでいった。しかし、和室の片付けに入ると、女性の手がピタリと止まってしまった。
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