「自分は有能」と勘違いする残念な人に欠けた視点 「因数分解」は物事を多角的に考えるための技術

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そのコツとは、「2つの掛け算」に分解することです。こうして表記すれば「そんな簡単なこと?」と思われるかもしれません。しかしこの動作がパワフルな理由があります。

まずは「2つに分ける」ことから始める

因数分解とは、文字通り分解することです。ここで重要になるのは次の問いです。

分解することの最小単位は?

答えは「2」です。「1つに分ける」という概念は存在しません(少なくとも私はそう考える立場です)。よって分けるという動作の最小は「2つに分ける」です。

「2」をつくれない人が「3」や「4」はつくれません。いきなり「3」や「4」を目指すから、難しくなるのです。まずは「2」をつくってから、さらに必要であれば「3」や「4」を目指せばいいのです。

もしあなたが、何かを分けて考えてみようと思ってもうまくいかず、苦手意識を持っているようでしたら、まずは最小単位で練習をしてはいかがでしょうか。なぜなら、それがもっともシンプルで簡単だからです。

先ほどの例も、まさに「2」をつくる発想があるかどうかの差が表れています。

(成果を決めるもの)=(自分のスキル) 

(成果を決めるもの)=(会社のブランド)×(自分のスキル)

このような視点でビジネスの世界を眺め、常に「2」をつくるトレーニングをすることは因数分解が得意な頭脳をつくるために極めて有効です。

いくつか例を示しておきましょう。

(売り上げ)=(客数)×(客単価)

(成果)=(質)×(量)

(問題)=(誰の問題か)×(何が問題か)

(施策のインパクト)=(影響範囲の大きさ)×(影響が出る割合)

最後に私からエクササイズをご提案いたします。

<エクササイズ>
次を「2つの掛け算」に分解せよ。
①生産性
②管理徹底

これらは私が実際に企業研修で演習として課すテーマです。生産性が上がらない企業にはどんな特徴があるでしょうか。仕事の管理徹底ができていないビジネスパーソンは何が問題なのでしょうか。

もちろん、唯一の正解はありません。あなたなりのユニークかつ本質的な回答ができればいいのです。ぜひチャレンジしてみてください。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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