別れた夫の悪口を子どもに言わなかった母の思い 2人の「ひとり親の子育て」を通じて感じたこと

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1人で3人の子どもを育てることになったお母さんがいました。お父さんは子どもたちの面倒をよくみるとてもいい人でした。読みたい本も買い与え、よく遊び、子どもたちはお父さんのことが大好きでした。

でも、好きな女性ができて、そのお父さんはある日、家を出て行ってしまったのです。

ほかに好きな人ができるのは、人間の感情としてありえます。人間の感情ですから、仕方がないですね。理由はいろいろあるでしょうけれど、今どき離婚なんて、珍しくはないでしょう。

とはいえ、実際に別れるのは、大変です。1人で3人の子育てをすることになったこのお母さんもそうでした。

あなたたちのお父さんは、大切な人

でも、このお母さんが偉かったのは、出て行った父親の悪口を、子どもの前でいっさい言わなかったことです。「あなたたちのお父さんは、とても大切な人だよ」と、言い続けたのですね。

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腹の奥底では、ぶちまけたいこともたくさんあったでしょうが、それを子どもの前では封印しました。

子どもたちの健やかな成長を考えたとき、思い出の中であっても大好きな父親が生き続けることを、何より最優先させたのです。

母親も人間です。苦しむし、悩むし、傷つきます。

でも、たとえ本心ではなくても、うそであっても、「あなたたちのお父さんは、とても大切な人」と言ったお母さんは、偉かったと思うのです。

木村 泰子 大空小学校初代校長

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きむら やすこ / Yasuko Kimura

大阪府生まれ。武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。大阪市立大空小学校初代校長として、障害の有無に関わらず、すべての子どもがともに学び合い育ち合う教育に力を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』は大きな話題を呼び、文部科学省特別選定作品にも選ばれた。2015年に45年間の教員生活を終え、現在は講演活動で全国を飛び回っている。東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター協力研究員

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