ホテルメッツの改善は、なぜこんなに地道なのだろう。その理由は、JR東日本というホテルのルーツにありそうだ。インフラ企業ならではの穏やかな風土が、奇をてらわずどっしりとした企業姿勢になっているのではないか。
少し歴史を遡ると、ホテルメッツを運営する日本ホテルの起源は、1915年、東京駅開業翌年に誕生した『東京ステーションホテル』にある。その後、1985年 に池袋に『ホテルメトロポリタン』を開業、1994年にまだ別会社だった国分寺ターミナルビルが『ホテルメッツ久米川』を開業したのがメッツブランドのスタートだ。
子会社がやがて合流、息づくJRの魂
これらのホテルはJR東日本の子会社で、駅ビル関係の会社がバラバラに運営していたが、2005年に東京、神奈川、千葉にあるJR東日本系列ホテルを吸収統合する形で日本ホテルが発足。『東京ステーションホテル』『ホテルメトロポリタン』と共に、首都圏25のホテルメッツの運営を任された。
そのルーツから、「JR東日本という鉄道会社の根幹にある安心、安全性を追求する姿勢が、連綿と受け継がれている」と堀田氏は説明する。
「ホテルメッツは快適性を第一としていますが、それには、安心安全がないと成り立ちません。コンセプトである『上質が息づく』の土台とも言えるものです。安心安全が前提としてあるからこそ、リピートしてくださるお客様がいて、夜勤者を含めたスタッフの不安解消、心理的安全にもつながっているのではないでしょうか」(堀田氏)
では、どのように安心安全を実現しているのか。これもまた地道な努力だった。消火訓練、防犯訓練の繰り返し、緊急時のマニュアル整備。ハード面では、防犯ブザーや監視カメラの設置……。いずれもゲストに見せたり訴求することはない。でも、「いざというときにしっかりと対応できる準備を怠っていません」と斎藤氏。
これに堀田氏は、「目に見えにくいところですが、清潔も安心安全につながっているのではないでしょうか。客室に汚れているところを見つけたら、その空間に安心感は持てません。でも清潔であれば不安要素がなくなり、人はくつろぎを感じやすくなります」と補足する。
続けて、ホテルメッツの代名詞とも言える「駅近」も安心安全の一つだ、と堀田氏。知らない街で危険なエリアに足を踏み入れたり、疲れているのに長距離を歩かねばならないリスクを回避しているのだ、と。
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