そもそも当時女性は、ドラマの中で描かれたように「無能力者」(婚姻状態にある場合)とされていた。さらに、明律大学の仲間には自らを「弱者」たらしめるヘビーな背景がそれぞれあるようだ。
すでに土居志央梨演じる山田よねの凄絶な背景は第3週で提示された。その描き方は、これまでの朝ドラとは明らかに異なるものであった。
残りの仲間のヘビーな背景も、おいおい明かされていくことだろう。特に、朝鮮半島からの留学生=崔香淑が日本で学ぶようになった経緯に注目したい(第15回の「ちょっと日本語を間違えると笑われるのが嫌!」というセリフは響いた)。
また「月経」(生理)の話が何度も出てくることにも、「弱者」としての女性のありようを、あるがままに描きたいというスタッフの意志がくみ取れた。
そもそも当の伊藤沙莉が、こう述べている。
――私はこのドラマが「道を切り開く人はすごい」「職業婦人はかっこいい」という捉え方ではないところも好きなんです(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 虎に翼 Part1』NHK出版)
中島みゆき『ファイト!』の歌詞を想起
そして私は、『虎に翼』に、朝ドラ史上最高の「弱者の物語」を期待する。もっといえば――中島みゆき『ファイト!』のようなドラマを。
1983年に発表されたアルバム『予感』からシングルカットされ、今や『糸』(1992年)などと並ぶ彼女の代表作を思い出したのは、第14回の寅子の「戦わない女性たち、戦えない女性たちを、愚かなんて言葉でくくって終わらせちゃ駄目」というセリフが、『ファイト!』の「♪闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう」という歌詞を想起させたからだ。
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