伊藤沙莉の脇を固める明律大学の仲間も実に個性的なメンツだ。さっそうとした男装の女性・山田よねを演じる土居志央梨、華族のお嬢さま・桜川涼子を演じる桜井ユキ、弁護士の妻で母親の学生・大庭梅子=平岩紙、朝鮮半島からの留学生・崔香淑=ハ・ヨンス。
特に、土居志央梨は、最大のめっけものだろう。近年では江口のりこを、NHK『これは経費で落ちません!』(2019年)で初めて見たときの異物感(褒め言葉)を思い出した。「よく見つけてきたな」と思う。
あと、オープニング映像(タイトルバック)が秀逸だ。個人的には朝ドラ史上過去最高のように思える。楽曲は米津玄師『さよーならまたいつか!』、映像はシシヤマザキによる。
ドラマの内容と明快に沿ったものになっていて、寅子/伊藤沙莉も登場するし、ドラマのストーリーを凝縮したものになっている。つまりは抽象アートというよりはコンセプチュアルな作りなのだ。
中盤で寅子の目がアップになるところがたまらない。見据えているのは自分の、仲間の、そして女性の未来だろうか。
単なる「女性の社会進出物語」ではない
以上、このドラマの見どころを述べてきた。未見の方が読まれると、伊藤沙莉演じる寅子が、抜群の能力を発揮して、閉鎖的な法曹界の中で、ガンガンとのぼりつめていくという(ある意味、朝ドラではありがちな)ストーリーを想像されるかもしれない。
しかし、最大の見所は、当時の女性が置かれていた、そうとうにヘビーな状況をストレートに描いていることにある。つまり単なる「女性の社会進出物語」「女性活躍物語」ではなく、ヘビーでストレートな「弱者の物語」を目指しているところに、このドラマの根本価値があると思う。
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