就職氷河期の閉塞感は、市場競争に対する支持を失うという意味で非常に大きな問題点をはらんでいる--大竹文雄・大阪大学教授

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価値観の経済への影響

同じ実態があっても、価値観とのギャップがあると多くの人が不満を持つということをお話ししましたが、価値観は一種の文化です。その国が持っている文化と実態がどう乖離するかによって問題が引き起こされています。

その価値観が経済のパフォーマンスに影響を与えているかもしれないというのが、最近の経済学で関心を持たれていることです。たとえば、次のような研究があります。

ハーバード大学のバローの研究ですが、教会に行く人たちが多い国ほど経済成長率が低いという結果があります。また、天国や地獄を信じている人の比率というデータもあって、その比率が高いと経済成長率が高いという研究もあります。

天国や地獄を信じると経済成長率が高くなるという議論にかかわる最近の研究で、個人主義と経済パフォーマンスが関係しているのではないかというものがあります。

何を元にしているかというと、ホフステッドという心理学者が世界各国の個人主義の程度を調べたデータです。個人主義というよりは、たとえば企業で訓練を受けているかとか、そういう企業に従属しやすいか、企業ではなくて個人の生活を重視しやすいかというようなイメージで、私たちが思うような個人主義とは少し違う指標になっていますが、いずれにしても彼が世界各国のIBMの社員を対象に行った調査があります。

それによるとアメリカはいちばん個人主義的な国で、アジア諸国が集団主義的な国。日本はだいたいその中間ぐらいに位置しています。

理論的には、個人主義と集団主義でどちらの経済成長が高いかは、はっきりしていません。集団主義では協調性が重視されるので、組織効率が高まり経済成長が伸びることも考えられます。一方で個人主義が強い場合は報酬や名声が個人に帰属するので、新しいアイデアを出そうということになり、技術革新に有利になる可能性があります。

今は技術革新の時代だから、技術革新が盛んになる個人主義の国のほうが有利ではないかというのが、彼らの結論です。

一方で豊かな国ほど個人主義になるのではないかという可能性もあります。彼らはそれをどう分析したかというと、個人主義の程度がひょっとして遺伝で決まっているとすれば、遺伝を示すような変数で個人主義の程度を説明してみたらどうかということでした。

そこで彼らが行ったのは血液型分布です。これはO型がどうだとかA型がこうだというのではなく、ABOの比率がアメリカとどのくらい近いかという距離を測ったものです。そして、先ほどの個人主義との関係が説明できるのかどうか。つまり分布の特性であって、B型は個人主義的などという話ではありません。

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