就職氷河期の閉塞感は、市場競争に対する支持を失うという意味で非常に大きな問題点をはらんでいる--大竹文雄・大阪大学教授

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つまりアメリカのほうが、運を別にすると、実態と価値観との間の乖離が少ない。日本人は運、才能、学歴といったところで実態と価値観のギャップがかなり広いということがわかります。



このギャップがどうも格差感をもたらしたのではないかと思い、実際に調べてみました。

まず、過去5年間にどれくらい格差が拡大したかの認識について、日本では06年の調査で平均的には7割の人が拡大したと思っています。アメリカでも過半数を超えています。

その中で、先ほどのギャップを調べました。運・不運で所得は決まるべきでないと思っているが、実際はそうなっていると感じている人たちを特定します。特定した人たちだけに限り格差拡大を認識しているかどうか比率を調べました。

日本でギャップを持っている人の格差拡大感は平均よりも5%高いポイントが見られました。アメリカでも同じです。また、運が所得に影響するようになったと思っている人たちは、将来の格差も拡大すると感じています。そういったギャップを持っている人の比率は日本がアメリカより高く、37.9%です。

つまり、自分の価値観と実態との乖離が発生している人たちが、格差感を随分持ったと考えられます。学歴で所得が決まるべきではないのにそうなったと思っている人たちは、日本だと半分以上です。一方でアメリカは2割。アメリカではあまりギャップがありません。

学歴による差がついてきたことが、日本の格差感に大きな影響を与えています。ここで申し上げたかったのは、どうも実際の所得格差がどうかという話ではなく、どういう形で所得が分配されるべきかという価値観と実態の間に生じたギャップが、あれだけの格差騒動をもたらしたのではないかということです。

そのほかこの調査で衝撃を受けた結果が、機会の平等です。将来豊かになる機会が平等にあるべきだという価値観と実態について聞きました。価値観としては、アメリカと日本、どちらも誰もが豊かになれるべきだと思っている人たちが多い。

そうでないと考える人たちもいることも驚きましたが、もう1つ驚いたのは、日本ではそういう機会が平等にあると思っている人は15%しかいないということです。アメリカは43%。実際にそうなのかどうかは、おそらく別だとは思います。

日本人のほうが平均的にはみんな豊かになっていると思いますが、そうなっていないと思っている人たちがかなり多いのです。

年齢階級で見るともっとはっきり出てきます。歳をとった人たちのほうが、誰もが豊かになれると思っている人の比率が高い。しかしこれは、もちろん非常に低い中での話です。

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