就職氷河期の閉塞感は、市場競争に対する支持を失うという意味で非常に大きな問題点をはらんでいる--大竹文雄・大阪大学教授

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残念ながら日本ではきちんとしたデータはないですが、それに近いことを年齢階級別に分析すると、若い世代のほうが運やコネが大事だと考えています。もちろん全年齢層でそのように考える人が増えていますが、それでも若い人たちの割合が多い。

直感的には若い人たちのほうが実力を信じたいと思うと感じるのですが、それとはまったく逆で、年をとった人のほうが実力が大事だと思っているということは、90年代後半以降の就職氷河期が、価値観に影響を与えたのではないかと思っています。

日本に市場主義が根付かなかった理由はほかにも考えられます。シカゴ大学のジンガレスというイタリア人の学者が、市場主義が根付くかどうか、その違いがなぜ生まれたかいくつかの仮説を考えています。

世界でアメリカほど市場主義を信頼している国民はいないということですが、彼の説では、アメリカでは民主主義が早く発生して、大企業が生まれる前に根付いたことが理由ではないかということです。

それ以外の国では大企業が先にあり、大企業の活動を抑えようとすると、すぐ社会主義に向かう。市場競争は、新規参入で競争を盛んにするという考え方ですから、既存の大企業を保護するという考え方と、実は似ていて随分異なります。

参入障壁をもたらさないようにするのが経済学の考え方で、市場主義は大企業の活動をサポートすることとは一対一になりません。大企業の活動に反対しようと思うと、すぐ社会主義的な反市場主義になってしまう。

ところがアメリカでは、まだ大企業が生まれる前に資本主義、民主主義が発達して、その段階では政府の役割は重要でなく、政府のコネがビジネスで成功するうえで大事だという考え方もなかったという理由が1つあります。

もう1つは、特にアジア諸国を念頭に置いた議論ですが、アメリカ以外の国では、アメリカの企業の参入を阻止するために非関税障壁をいろいろなレベルで置きました。コネがないと市場に参入できないような、コネが重要な社会にあえてしたというのが1つ。

さらに、日本に当てはまると思うのですが、もともとマルクス主義の影響が強かった国では、市場主義と大企業主義、財界は一体化してマルクス主義と闘うという形になっています。それがたとえば日本人にとっては、市場競争が大事だと言う人は、すぐ大企業の肩を持つ人だと誤解されるようになったということがあります。

実際に、日本の経済財政諮問会議が小泉政権の前からできていましたが、そのメンバーは財界の代表と経済学者ということで、市場主義者と財界代表が一緒に入りました。アメリカの経済諮問委員会は、経済学者ばかりが入っています。

アメリカの政権全体としては大企業の人がたくさん入っているので、どこが違うのかといえるかもしれないですが、少なくとも経済財政諮問会議のメンバーは、財界と経済学者が民間代表として一緒になり、市場主義者の代表という形で入っています。

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