就職氷河期の閉塞感は、市場競争に対する支持を失うという意味で非常に大きな問題点をはらんでいる--大竹文雄・大阪大学教授

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それでは、市場経済をあまり好まない日本人は、国に期待するのかどうか。

同じ調査の中で、自立できないような非常に貧しい人たちの面倒をみるのは国の責任だという考え方に同意するか、という質問があるのですが、この質問でも、日本は例外的に賛同する比率が低いのです。5割は超えますが、それでも59%です。小さな政府を志向するアメリカは、日本に近いです。近いといっても7割なので随分離れてはいますが。

ここに、小さな政府と市場という1つの組み合わせが見られると思います。それ以外の多くの国は、やはり再分配と先ほどの市場経済という組み合わせを選んでいます。

ロシアは、大きな政府で市場経済を嫌うという、いかにも旧社会主義国らしい組み合わせです。中国は、どちらかというとヨーロッパを中心とした市場主義の国の考え方に近いことがわかります。

ここで言いたいことは、日本人の市場経済に対する考え方は、私たちが考えているミクロ経済学に書いてある考え方とは随分違うということです。



2人の能力に差があったときに賃金格差があるのは不公平かどうか

なぜ日本人が国にも期待せず、市場を嫌うのかという理由は、私自身にもよくわからないのですが、もしかすると国レベルではなくて、会社をはじめとしたコミュニティの中で貧しくなったときに助け合うといったように、もう少し狭い世界を対象に考えていることに原因があるのかもしれません。

もう1つは、規制で競争を減らして、規制の中でレントをシェアするという考え方があったのかもしれません。

ただ、こういう価値観は変わらないかというと、おそらくそうではないと思います。その例として中国が挙げられます。

�小平以前の中国で、格差を是認するような考えを持つ人はいなかったと思いますが、中国人の留学生に聞いたところ、「教育で格差はいいことだと教えられる」ということでした。

格差はいいことで、それで競争が促進されて豊かになるという考え方を学校で教わるのですから、その教育の成果が出ています。

実際に、日本人の考え方が変わってきた例を1つ挙げます。

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