凄い発想できる人が実践「掛け合わせ」の驚く技術 回数を重ねていくことでセンスが磨かれていく

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一方で、自分自身をはじめとする一般消費者がマットレスをどのようなシーンで使用しているかを考えてみると、意外なことに気がつきます。

当然マットレスは睡眠をとる時に使いますが、それだけではなく、寝転がりながらダラダラとスマホを見たり、読書をしたり、PC作業をしたり、ストレッチをしたり、映画やドラマを観たり、ちょっとお行儀が悪いですがポテチやアイスを食べたりと、実は睡眠以外のシーンで“セカンドリビング”として機能していたのです。

ベッドはただの寝る場所ではなく、寝転がった状態で過ごすための場所だった、といえるでしょう。つまり、マットレスを使う人の深層心理には「本当は布団にくるまって寝っ転がりながら生活をしたい」というインサイトが隠れていたのです。と同時に、これは、「ベッドでダラダラしながら過ごすのは自己管理ができている人間の姿ではない」という罪悪感から、なかなか意識化・言語化されづらいインサイトでもありました。

「ベッドでダラダラしても良いじゃない」

そこで、Sleepy Tofuでは、ブランドのふるさとである台湾の空気感や、豆腐をモチーフにしたユニークなネーミングが醸し出すゆるさの力を借りて、「ベッドでダラダラしても良いじゃない」というプロポジションを提案することにしました。これは、コロナ禍以降の時代の空気がまとっている、自分自身を愛してあげよう、甘やかしてあげようという「ご自愛」カルチャーにも通ずるところがあります。

このプロポジションをもとに、ベッドに寝転がりながら台湾料理を食べることができる「寝転がれる台湾料理店」というアイデアを着想。Sleepy Tofuのマットレスを座席に見立てて、台湾料理を提供するポップアップレストランを開催することにしたのです。

ベッドの上で台湾肉豆腐や台湾カステラを食べて、台湾茶を飲み、お腹がいっぱいになったらゴロンと横になる。ちょっとお行儀悪いかもしれないですが、「別にいいじゃない、みんな本当は家でそうやって過ごしているじゃない」というメッセージを添えながら。この企画は『寝ころび台湾料理店』と銘打ち、日本国内ではブランド初のリアルイベントとして開催されました。

「寝転がれる台湾料理店」というアイデアは一見奇抜に思えるかもしれませんが、インサイト→プロポジション→アイデアと、順を追いながら思考を積み上げることでたどり着いたクリエイティブジャンプです。

では、インサイトとプロポジションを押さえたうえで、実際どのようにすればビジネスに活きるアイデアを生み出しやすいのか、掘り下げていきましょう。

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