例えば、〔ホテル〕×〔犬〕なら、
・ペット連れの方向けのホテルは世の中にすでにあるが、「ペット向け」を強く訴求しているがゆえ、デザイン性があまり高くないところが多い。一般の消費者目線で見ても上質感があるホテルで、かつ犬と過ごせるところはないか?
・すでに犬を飼っている方向けのホテルではなく、犬を飼育していない方が犬との生活を追体験できるホテルはどうだろう? 「保護犬や保護猫とのマッチングもできる」という文脈を加えると、昨今話題になっているペットの殺処分問題への解決策にもなる。
・犬に限らず、リスやイグアナをはじめとするエキゾチックアニマルなど、なかなか飼育に踏み出せない動物とふれあう体験を提供できるホテルはどうだろう? 飼育の解像度を上げることで、現実を理解しないままペットショップで衝動買いをしてしまい、捨ててしまうような悲劇を防ぐことができるかもしれない。
といった具合に、深掘りして考えてみると、どんどんサービスのアイデアが生まれてきます。
このように、掛け合わせから連想を続けていくと、すぐに実現できそうなものから、フィジビリティが低そうなものまで、いろいろな精度のアイデアが入り混じった状態で発想が広がってきます。
ここで一つひとつのアイデアを練りすぎたり、焦ってボツにしたりする必要はありません。一見微妙に思えるアイデアだとしても、それが最もフィットする状況が訪れることもありますし、少しアレンジすることで光り出す可能性もあるので、無駄にはなりません。
最初のうちは、なかなか手応えのあるアイデアが出てこなくて嫌になってしまうこともあるかもしれませんが、この思考法を続けていくと、段々とアイデアを発想するための思考回路ができてきます。
これは、草むらに獣道をつくっていくプロセスと同じです。初めはなかなか見通しが悪く、迷子になってしまうこともあるかもしれませんが、何回も繰り返すうちに、うっすらと足跡が見えるようになってきます。回数を重ねていくことで発想のセンスが磨かれ、やがてはっきりとした道筋となり、スピーディーに前に進むことができるようになるのです。
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りゅうざき しょうこ / Shoko Ryuzaki
1996年生まれ。株式会社水星代表取締役CEO。東京大学経済学部卒。2015年、在学中に株式会社L&Gグローバルビジネス(現・水星)を設立し、北海道・富良野でペンション運営を開始。その後、関西を中心に、ブティックホテル「HOTEL SHE,」シリーズを展開し、湯河原、層雲峡をはじめ全国各地で宿泊施設の開発・経営を手がける。ホテル予約プラットフォーム『CHILLNN』や産後ケアリゾート『HOTEL CAFUNE』など、従来の観光業の枠組みを超え、〈ホテル×クリエイティブ×テック〉の領域を横断し、独自の事業を展開する
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