アップル「EV開発から撤退」の意味と、次なる探索 「iPhoneと車との連携強化」は新たな段階に入る

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ここで単純な試算をしてみよう。アップルの主力製品であるiPhoneは、400ドルからという価格レンジだ。これに対して、EV専業メーカーで唯一利益を上げているテスラのEVの価格は、4万ドルから。

現在iPhoneを年間2億台販売して得られる収益を、200万台で得られる計算になる。現在の世界の乗用車出荷台数は7530万台を基に考えると、シェア2.6%でiPhoneと同等のビジネスに成長することになる。
新規参入する市場として有望であるとの判断があったことは間違いないだろう。

なぜアップルはEV開発をやめたのか?

Bloombergによると、複数あったアップルのEVのプロトタイプの1つは、かつてヒッピー文化で象徴的だったフォルクスワーゲンのバン(Type 2)をイメージした車体だったという。

アップルは、完全な自動運転(レベル5)を実現する電気自動車の製造を目論み、年間10億ドル(約1500億円)を投資してきた。その過程で、テスラやメルセデス・ベンツ、BMWといった自動車メーカーから人材を雇い入れ、160万キロを超える試験走行にも取り組んできたという(ブルームバーグ)。

しかしアップルはEV開発を中止した。その理由は、
1. 利益率の低さ
2. 優位性の欠如
3. 次世代CarPlayという解決策

の3つが考えられる。

まず1つ目の利益率の低さについて。現在のアップルの利益率は、直近の2024年第1四半期(2023年10〜12月)で、なんと45.9%を記録し、昨年までのターゲットだった35〜38%に比べて大幅に上昇している。

その要因はiPhoneの中でも価格が高いProモデルが好調だったこと、67%の利益率を誇るサービス部門の売上比率が上昇したことが原因だ。

これに対して、EVメーカーの利益率は振るわない。利益を出しているアメリカのメーカーはテスラだけで、利益率は18.2%。リビアンの利益率は−45.8%、ルシッドは−225.2%というのが現状だ。

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