経営者だからこそ感じる「労働組合」の重要性 データ重視で失われた「対話」の共同体を求めて

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青木:言い方を変えると、アドボカシーですよね。立場の弱い人たちの権利を主張、擁護しましょうっていう。どうしても経営者と労働者が1対1で向かい合ったら、構造上弱い立場に置かれてしまうのは仕方がない。だから1対1で向かい合うのではなく、1対多で対話するために組合をつくりましょうっていう話だと思っています。ユース世代や子どものアドボカシーも同じ文脈だと思います。日本だと権利っていうものがあるようでない。ないというか、「使えていない」ともいえるかもしれません。

この点が民主主義を考えるときにとても重要だと思っています。一人ひとり、権利を持っている人間が集まって社会ができているという認識ですよね。でも日本の伝統的な価値観では、まず大人の社会があって、そこに未熟な一人前ではない子どもという存在が加わっていくという建て付けになっている。一人前になるまでは権利も何もないよっていう発想。一人前になって初めてものが言える。そうなっちゃうと、子どもも大人も等しく権利を持っていて、一人ひとりがものを言える民主主義はなかなか根付かない。

「ガチャ化」する貧困

今井:確かに。D×Pでは、子どもの権利とか困窮者の声、虐待状況にある人の声を社会に出していっていますが、さらに働く人、働けない人、しんどい状況のなかでなんとか働いている人の声も拾えるようにしていきたいですね。

青木:とても重要ですよね。困窮している若者が働くって言ったら、すごく劣悪な職場環境とか、労働者を使い捨てみたいに考える会社にしかつながれなかったりする状況があります。もちろんそんなことばかりではないけど、それが「ガチャ化」してしまっています。貧困であったりDVとかネグレクトのある家庭で生まれ育って、なんとか大人になって就職したんだけど、生活費をなんとか稼ぐので精一杯ですと。しかもその職場が劣悪な環境だったら、それは経済的にはなんとかなっているけれど、果たして貧困状態から抜け出せたことになるのだろうか。

こんな感じで、どこまでいっても貧困の状態から抜け出せない状況になっている。本書の題名にもありますが、ある種の階級のようになってしまっていることが問題だと思います。その階級化の延長線上に、もうこの世界をぶっ壊してくれよってトランプ大統領を支持するポピュリズムの社会背景になると思う。そういう家庭環境で育ってしまったけど、大人になったらディセントワーク、尊厳ある仕事につけることが大事ではないかと思っています。

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