経営者だからこそ感じる「労働組合」の重要性 データ重視で失われた「対話」の共同体を求めて

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青木:そういうふうに考えると、やはり教育が重要だなと。確かにいい大学に入ると貧困状態から抜け出せるんだけど、学費が払えなかったり塾に行けなかったりして、そもそもいい大学に入ることができない。いい大学に入るためにはまず貧困じゃダメっていう社会は、全然フェアではありません。借金ではない奨学金があって、誰しもが教育を受ける機会が確保されていて、その先に働くこともあって、初めて民主主義的な社会の基盤が出来上がるのではないでしょうか。

新自由主義で生じた分断を結び直す

今井:同じ思いです。僕らも法人単体ではなく、そういう社会をつくっていくために育てあうことを、より明確にビジョンとして打ち出していくことがすごく大切だと思っています。これまで非営利について考えてきましたが、もう少し一人ひとりの当事者による働きかけやムーブメントなど促すことができないかなども考えていきたいですね。

青木:困窮状態を救うっていうのは、マイナスをゼロにすることだと思います。NPOってそこをやることは得意だと思うんですけど、ではどうやってゼロをプラスにしていくのか。すでにあるものを応援して育てていくようなイメージ。これからの非営利セクターは、そこをやっていくことも必要なのかもしれないですね。

今井:2023年度は、D×PでNPO7団体への資金提供や経営的な支援なども行ってきましたが、同時に非営利的な観点に目が向けられるリーダーや起業家の育成も必要なのかと思いました。新自由主義で生じた分断を結び直す。民主的多元主義的な社会をつくるうえで、別のレイヤーを結び直せるような役割を担う人を輩出できるようにしていきたいですね。

青木:どうやってつなぐか。その一つの手段にラジオがあるのかもしれない。なんでもラジオにするという(笑)。誰かをやっつける、打倒するのではなく、今すでにあるものをどうやって結び直すのか。それが現実的ですよね。

今井 紀明 認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長

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いまい のりあき / Noriaki Imai

1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立し、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと日本社会から大きなバッシングを受ける。対人恐怖症になるも友人らに支えられ復帰。偶然、中退・不登校を経験した10代と出会い、自身のバッシングされた経験が重なり、2012年にNPO法人D×Pを設立。経済困窮、家庭事情などで孤立しやすい10代が頼れる先をつくるべく、登録者12,000名を超えるLINE相談「ユキサキチャット」で全国から相談に応じている。

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青木 真兵 「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター、古代地中海史研究者、社会福祉士

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あおき しんぺい / Simpei Aoki

1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行なっている。著書に『手づくりのアジール──土着の知が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある。

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