経営者だからこそ感じる「労働組合」の重要性 データ重視で失われた「対話」の共同体を求めて

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今井:学校法人とか社会福祉法人、労働組合などの組合系も、本来は非営利の活動なんですよね。弱い立場にある人とか働いている人のためにつくられたはずなんです。そこに立ち返って、対話的に組織を新しくつくっていくことに意味があるのだと思っています。そういう意味で、非営利セクターは経営者などのエリート層と労働者の狭間にあるものなのかなとも思っています。より対話を促していったり、一人ひとりの社会的な動きを新しくつくっていくような役割ですよね。

中間団体としてのNPO

青木:おっしゃる通りで、僕も社会における中間的存在がなくなっているのはすごく感じています。縦割り行政って言われますけど、同じ問題なのにこっちの窓口に行って、それから別の窓口に行かねばならなかったり。窓口が違うだけで、 連携がなかなか取ってもらえなかったりする。

青木氏の写真
青木真兵(あおき しんぺい)/1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行っている。著書に『手づくりのアジール──土着の知が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある(撮影:宗石佳子)

部分部分ではすごく合理的なシステムが組まれているとは思うんですけど、前提が変わったせいで横の連携を求められるとうまく機能しないのは、行政に限らずあらゆる産業、業界にいえることではないでしょうか。そしてその断絶を埋めるのが非営利的存在だということですよね。僕はユキサキチャットとかユースセンターとか、定時制高校もそうですけど、D×Pがやっていることってそれだと思っているんです。

失われた30年は回復する気配もなく、どんどん格差が広がっている。相対的貧困率は若干回復傾向にありますが、依然として存在する社会的な分断を埋めることは不可欠です。NPOはそこを応急処置的にやっているんですけど、予防的にというか、新しい社会をつくっていくような動きも必要だと思っています。

今井:確かにNPOの役割はその意味で重要だと思っています。あと、この格差や分断を埋めていく、橋をかけていくことは民主主義を育てることなのかなと思っています。その動きの一助になるのは非営利組織、NPOの役割だと思っています。D×Pは寄付やボランティアなど市民的な動きを一緒につくっていると思っているので、そこがNPOの面白さでもあります。ある意味で思想が違う人たちも、「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会を目指す」というD×Pのビジョンのもとに集まってくれる。一緒につくるということは、このアクション自体が公共的だとも言えるんですよね。公共は自分たちがつくる、という意味でもあると思います。

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