「恋空」のスターツ出版がスゴいことになっていた チームで作る穏やかな風土で、売上が5年で5倍超に

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――こうした取り組みはどういう経緯で始まったのでしょうか?

菊地:当初はスターツ出版も、よくある普通の中小出版社だったんです。でも、「このままだと成長はない」と思い、社員同士のコミュニケーションを活発にしようと。

でも、最初はこの取り組みには反対が多かったんです。当時は「みんなでキャンプなんて、誰も来ませんよ」と言われて。そこで、それぞれの部署の一番若手のメンバーをレクリエーション委員会という形で組織して、その子たちに企画を考えてもらって、彼らが中心となって呼びかける形で始めました。

シリーズ累計250万部を突破するなど、大ヒット中の『鬼の花嫁』(撮影:梅谷秀司)

円滑な社員コミュニケーションで業績アップ

――ボトムアップで盛り上がる企画にしたわけですね。

菊地:そうです。上から押し付ける形は良くない。社員旅行ではたくさんのアクティビティを用意していますが、イベント企画はすべて、若手社員が中心になって実行してくれています。

それに、こうしたコミュニケーション活性化策の多くは、「スターツ出版未来プロジェクト」という社内コンペで生まれたアイデアです。社内コンペで、最終的に全員の投票で決まったのがこうした取り組みでもある。自分たちで決めたから、みんな参加する。

――そのようにして醸成された企業風土が、さまざまな取り組みを行いやすくしているんですね。

菊地:そうです。全国の出版物の売り上げは、残念ながらこの20年、ほぼ右肩下がりです。そんな中、スターツ出版の書籍の売り上げはこの5年で9億円から51億円で5倍超になってるんですね。毎年120%で、ずっとアップしている。

社員と食事をすると、「シャッフルランチ」や社員旅行の「モアジャム」、部署横断コミュニケーションが楽しかったという話が多い。自分の部署以外の人と仲良くなって、将来はその部署の仕事もやってみたい、という意見もあって、こうした取り組みによって確実に社員の視野が広がっています。そういう社員の気持ちが会社の業績を担保していますね。

その企業風土が、社員の才能ややる気を引き出し、「ブルーライト文芸」のムーブメントにつながった(撮影:梅谷秀司)

穏やかでのびのびとした企業風土が、作家とのコミュニケーションを生み、またさまざまな取り組みにつながってヒット作を生んできたスターツ出版。

後編(18日公開予定)では、中高生に人気の作品を作り出すヒットの法則をお伺いする。「青くて、エモい」スターツ出版の小説たちは、いかにして生み出されていったのだろうか。

勃興するブルーライト文芸
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谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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