――こうした取り組みはどういう経緯で始まったのでしょうか?
菊地:当初はスターツ出版も、よくある普通の中小出版社だったんです。でも、「このままだと成長はない」と思い、社員同士のコミュニケーションを活発にしようと。
でも、最初はこの取り組みには反対が多かったんです。当時は「みんなでキャンプなんて、誰も来ませんよ」と言われて。そこで、それぞれの部署の一番若手のメンバーをレクリエーション委員会という形で組織して、その子たちに企画を考えてもらって、彼らが中心となって呼びかける形で始めました。
円滑な社員コミュニケーションで業績アップ
――ボトムアップで盛り上がる企画にしたわけですね。
菊地:そうです。上から押し付ける形は良くない。社員旅行ではたくさんのアクティビティを用意していますが、イベント企画はすべて、若手社員が中心になって実行してくれています。
それに、こうしたコミュニケーション活性化策の多くは、「スターツ出版未来プロジェクト」という社内コンペで生まれたアイデアです。社内コンペで、最終的に全員の投票で決まったのがこうした取り組みでもある。自分たちで決めたから、みんな参加する。
――そのようにして醸成された企業風土が、さまざまな取り組みを行いやすくしているんですね。
菊地:そうです。全国の出版物の売り上げは、残念ながらこの20年、ほぼ右肩下がりです。そんな中、スターツ出版の書籍の売り上げはこの5年で9億円から51億円で5倍超になってるんですね。毎年120%で、ずっとアップしている。
社員と食事をすると、「シャッフルランチ」や社員旅行の「モアジャム」、部署横断コミュニケーションが楽しかったという話が多い。自分の部署以外の人と仲良くなって、将来はその部署の仕事もやってみたい、という意見もあって、こうした取り組みによって確実に社員の視野が広がっています。そういう社員の気持ちが会社の業績を担保していますね。
穏やかでのびのびとした企業風土が、作家とのコミュニケーションを生み、またさまざまな取り組みにつながってヒット作を生んできたスターツ出版。
後編(18日公開予定)では、中高生に人気の作品を作り出すヒットの法則をお伺いする。「青くて、エモい」スターツ出版の小説たちは、いかにして生み出されていったのだろうか。
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