「恋空」のスターツ出版がスゴいことになっていた チームで作る穏やかな風土で、売上が5年で5倍超に

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菊地:そういうことはあり得ませんね。そこが、他の出版社との大きな違いになるのかもしれない。同じ部署内はもちろん、営業と編集の仲が悪いみたいな状況は、うちの会社ではあり得ないですね。出版に限らない話ですが、個人が中心で動くだけではダメだと思います。

――スターツ出版では紙の小説を電子コミックにしたり、またその逆も……といったメディアミックス戦略も意欲的です。そうした事業展開が利益増に拍車を掛けているようにも思いますが、たとえば小説の担当者と、マンガの担当者は違うわけですよね?

菊地:そうですね。

――担当者間で、トラブルが起きたりしないのでしょうか? 「自分が育てた大事な作品を、あの人に担当させるなんて……」というふうに。

菊地:それは、なりませんね。というのも、みんな仲がいいんですよ。むしろ作家さんを紹介しあっている(笑)。

僕が一番大事にしているのは「人の和」です。スターツ出版では、「穏やかでのびのびとした社員の成長が持続できる企業風土」を3カ年の成長戦略の一番上に掲げています。

最も重視しているのは「社員のコミュニケーション」

――なるほど。具体的にどのような取り組みをやられているのでしょうか。

社内の人材交流について、熱く語る菊地社長。1時間超のインタビューの中で、20分ほど割くことになった(撮影:梅谷秀司)/写真をすべて見る場合は本サイト(東洋経済オンライン)内でご覧ください

菊地:「シャッフルランチ」という部署横断のランチ会や、ノウハウ共有を目的に、若手が講師になる「私たちの仕事セミナー」など、そういうことをしょっちゅうやっています。

20年間継続している、全社員が1泊2日でさまざまなアクティビティを体験する社員旅行「モアジャム」など、僕はそうしたイベントに一番エネルギーをかけている(笑)。

出版に限らず多くの会社が、自分の部署の小さな世界の中だけで、黙々と仕事をしていることが多いと思います。隣の部署の人たちは何をやっているのかさっぱりわからない……そんな現実があるのではないでしょうか。

でも、そういう部署の垣根を取り払って、隣の部署、あるいはまったく違う部門の人たちと仲良くなれば刺激があるし、新しいものが生まれるし、つらいときには相談に乗ってもらえる。なにより会社が好きになって、仕事も楽しくなると思います。

――たしかに、いろんな人と話すことで、新しいアイデアは生まれますよね。

菊地:会社で働くって面白いよね、と思ってもらいたい。それが人生の大きな要素ですから。もちろん、楽しいことばかりだけではダメだけど(笑)、でも、たまに思いっきり楽しい思いをしてもらえば、日々の仕事は自然とみんな一生懸命になり、結果として数字もついてくるんです。

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