「恋空」のスターツ出版がスゴいことになっていた チームで作る穏やかな風土で、売上が5年で5倍超に

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――現在のように、さまざまな文芸作品を出すようになったきっかけはなんだったのでしょうか?

菊地:21年前に『Deep Love』というケータイ小説を出版しました。作家さんからの持ち込みだったのですが、これがミリオンヒットになった。次の年に出したのが『天使がくれたもの』で、これもミリオンヒット。その次が『恋空』ですね。これは他社の小説投稿サイトに書かれていた作品を書籍化したのですが、これが大ヒットして、なんと3年連続でミリオンヒットが出た。

――わずか数人の編集部でそれは、すごいですね。人気の理由はどこにあったのでしょう。

菊地:3作品とも、当時の中高生の気持ちをよく表していたんだと思います。携帯メールを介した口コミでどんどん流行し、クラスで噂が飛び交い、全国でケータイ小説のムーブメントが起きました

ただ、流行はずっと続くわけではなく、『恋空』ブームが収束したときには、返本の山になってしまって。それを見て、「ミリオンヒットに溺れてはいけない」と思った。ですから、毎月文庫本を数冊作ってコツコツいこうと思ったわけです。

野いちご
タイプの異なる、3つの小説投稿サイトを運営。作家開拓の起点になっている/出所:「野いちご」公式サイト

でも、肝心の作家さんをどう探していいのかわかりません。作家さんを発掘するために、自社で投稿サイトを開発しようと、17年前、「野いちご」という小説投稿サイトを作りました。「OZmall」を開発した社内のITエンジニアによる自社開発です。

自社の小説投稿サイトで、読者の等身大の作品を

菊地:そこには趣味で小説を書いている人たちがたくさん投稿してくれました。無料で小説を読めるので、人気の作品にはどんどん読者が付いて口コミを書く。作者が書いたあらすじに対して「主人公にはハッピーエンドを迎えてほしい」といった投稿があったりします。

すると、だんだん作者と読者が一体で作るような物語が増えてきたんです。彼らが二人三脚で作るコンテンツが生まれてきた。

そうして生まれた等身大の作品を文庫本にするわけです。ただ、最初の頃はスターツ出版の認知度も低かったので、作者に出版契約許可の電話をしてみたら、詐欺と間違えられたり、いろいろな苦労はありましたね(笑)。

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