エネオスHD、異例の「東燃出身」社長が誕生の深層 セクハラ解任の後始末で「黒バット」文化も激変

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組織改正の一環として今回、エネオスは「広域支店」を新設し、広域特約店や販売子会社に対する支店業務を集約して「関連事業に関する権限・責任を明確化する」としている。「広域支店では問題のある取引が一気に整理される可能性もある」と中澤氏は指摘する。

旧日石は大手特約店へのホールセールを得意とする一方、旧東燃ゼネラルでは小さな特約店にも直接納入していた。新体制では特約店との関係にも変革が迫られる可能性がある。

日沖氏は、「宮田氏も山口氏も特約店とのしがらみがなく、営業文化の改革を進めるには適任だ。今回の人事はその姿勢の表れとみることもできる」と話す。宮田氏の社長就任は、旧日石の「黒バット」文化そのものを変革する可能性を持つ。

新体制は失敗が許されない

一方、東燃ゼネラル出身の宮田氏にどこまでエネオスグループ全体の経営の舵取りができるかは未知数だ。

宮田氏についてエネオス関係者からは、「人の話をじっくり聞くタイプで敵も少なかった。製油所の再編議論でも旧社のしがらみにとらわれずに合理的に議論を進めていた」との評価がある一方、「合理的であるがゆえに、ぎりぎりと部下を追い込んでくる」という声も聞かれる。

ただでさえ再編を繰り返してきたエネオスは社内の主導権争いも苛烈だ。特約店との関係構築に失敗したり、近年相次ぐ製油所トラブルの改善や将来の再編につまずけば、新たな人事抗争が勃発しないとも限らない。

今後、エネオスでは取締役が出席する宴席では管理職や役員が相互に監視し、不祥事が起きた場合は連座して責任を負う新ルールが設けられる。

4月からの新体制は、セクハラなどの人権侵害行為の根絶はもちろん、失敗の許されない綱渡りの経営が迫られることになる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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