エネオスHD、異例の「東燃出身」社長が誕生の深層 セクハラ解任の後始末で「黒バット」文化も激変

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新社長となる宮田氏は東京工業大学大学院で原子力工学を専攻し、1990年に東燃に入社。同社で和歌山や川崎の工場長を歴任してきた製造畑の人物だ。

売上高2兆円規模の東燃ゼネラルが8兆円近くのJXホールディングス(いずれも2016年度)に吸収統合され、JXTGホールディングスが誕生したのが2017年(2020年にエネオスHDに改称)。

東燃ゼネラルのエッソ。ENEOSブランドに統合され姿を消した(2015年撮影:尾形文繁)

JXHD自体も旧日本石油(日石)を主体に複数企業が再編を重ねてきた歴史を持つ。東燃ゼネラルとの統合以来、社長ポストはつねに旧JXHD、それも旧日石出身者が押さえてきた。

統合当時、東燃ゼネラルの社長を務めていた武藤潤氏は、2020年に鹿島製油所の運営会社社長に就任する形でエネオスHDの経営から退いた。現在、エネオスHDの常勤取締役は宮田氏以外すべて旧日石出身者が占めている。

経営トップの不祥事が相次ぐ緊急事態とはいえ、東燃ゼネラル出身者がエネオスHDのトップに就くのは極めて異例と言える。

また、エネオスHD傘下で石油製品の精製・販売など主力事業を担うエネオスの社長には山口敦治執行役員電気事業部長が就任する。山口氏は三菱石油出身で和歌山製油所所長や製造部長のほか、再生可能エネルギー事業部長も歴任した。

浮き彫りになった「脱黒バット」

エネオスグループで、非・日石かつ製造部門出身の宮田氏や山口氏が社長に就任したことは大きな意味を持つ。

「旧日石が主流のエネオスは『販売の会社』。製造部門は主に旧東燃系が担う形になっていた。今回、製造系のトップがエネオスの経営の中心を担うことになり、“脱黒バット“が進むことになる」

そう話すのは旧日石出身で日沖コンサルティング事務所の日沖健代表だ。「黒バット」とは、旧日石におけるエリートコースを表す隠語。「黒」は産業エネルギー販売部門、「バット」は勤労部長が野球部部長を兼任する伝統から勤労部門を指している。

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