東大より攻めてる?「上智大の日本史」問題の凄さ 「現代的な視点」から歴史を見る良問だ
近年の東大日本史は丸くなった感がありますが、入れ替わるかのように、また違った角度から「攻めた」問題を出題する大学が現れました。それは、上智大学の入試問題(TEAP利用型)です。
私は毎年見ているので慣れてきましたが、今年度の問題文の冒頭をお読みになるだけでも度肝を抜かれるのではないかと思います。
問題文はこのあと古代の旧都、近世の城郭といった権力者が行った巨大土木事業とそれに使役される民衆の様子を詳述し、それに沿った形で設問が用意されています。このように現代的なテーマに沿って日本史を概観するというのが上智大日本史の定番であり、例えば、昨年度は移民の歴史、一昨年度はジェンダーの視点から見る歴史でした。
政治にも絡む内容を入試問題として取り上げることには賛否両論あるでしょう。しかし、過去があるからこそ今があるのであって、歴史と現代とを結びつける試みは検討するに値すると私は考えています。例えば、今年度は最後に次のような問題が用意されていました。
② 謝恩使・慶賀使など琉球使節の江戸入り
③ 大日本帝国憲法の発布
④ 1964年オリンピック東京大会の開催
国家的イベントの裏には政治目的がある
〈祝祭型資本主義〉については、問題文に「商業五輪と新自由主義の結託した再開発」と説明がありました。たしかに、オリンピックや万博といった国家的イベントの裏には政治目的があります。人々が〈祝祭〉空間に目を奪われている間に、その目的も達成されているのです。
そのような事例は、歴史上にも見受けられます。聖武天皇は、民衆の協力を得ながら大仏を造営することで、自らの威勢を誇示するとともに、鎮護国家の仏教の力で疫病や政争などの不安を一掃しようとしました。江戸幕府は、琉球からの使節に異国風の服装や髪型を強制することで、将軍が異国人を入貢させているという構図を演出しました。大日本帝国憲法の発布や、1964年の東京オリンピックの開催にも、日本が近代国家の一員であり、平和国家として戦後の復興を果たしたことをアピールする狙いがありました。
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