東大より攻めてる?「上智大の日本史」問題の凄さ 「現代的な視点」から歴史を見る良問だ
こうして見ると、「歴史は繰り返される」ということの意味がよく分かります。見かけは違えども、同じ図式が繰り返されているのです。それは、一つの視点を設定することで見えてきます。その意味で、この問題は現代的な視点から歴史を見る良問であると思います。
皇位継承のあり方について歴史にヒントを得る
ところで、上智大日本史のようにあからさまではありませんが、東大日本史にも現代的な関心から出題されたと思われる問題が見受けられます。例えば次の問題です。
本問の趣旨は、「摂関政治において、藤原氏が外戚の立場から政治の実権を握ったことで、天皇の嫡子への皇位継承が安定した」ということです。
皇位が父(天皇)から嫡子(皇太子)に継がれるというのは、現代人からすると当然(それ以外の方がイレギュラー)のように見えますが、はじめから嫡子継承が確立していたわけではありません。7世紀後半には壬申の乱という皇位継承争いがありましたし(天智天皇の弟の大海人皇子が、天智天皇の子の大友皇子の即位を阻止したとも見て取れます)、奈良時代の8世紀には長屋王一族が滅ぼされるなど血生臭い政争も見られました。
問題は、天皇が政務を行っていたということにあります。そこで、摂関政治では藤原氏が外戚の立場から、摂政・関白として政治の実権を握りました。一方で、天皇家としては藤原氏に政務を委ねることで、幼少のまま嫡子を皇太子に立て、即位させることが可能となったことが、問題で与えられた資料文から読み取れました。
つまり、皇位継承を安定させたい天皇家と、政治の実権を握りたい藤原氏のウィン‐ウィン関係によって、摂関政治は成立したのです(なお、本問だけでなく、問題で資料文が与えられ、それを踏まえて考えるというのが東大日本史の特色であり醍醐味でもあります)。
本問は、平成から令和への改元にあたり、皇位継承のあり方が国民的な議論となる中で出題されたものでした。そのことを、出題された東大の先生が意識されていなかったとは思えません。歴史を知ることで、この国の〈しくみ〉を理解し、現代に山積する諸問題に対処するための糧とする。東大日本史もまた、歴史を通じて現代を問い、そして、歴史を現代に活かす方法を指し示しているのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら