佐々木麟太郎の「5000万円奨学金」に見る日米差 「日本と違って凄い!」…とは単純には言えない

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その一方で「奨学金なんだから、結局は返さないといけないのでは?」と疑問を抱く読者もいただろう。

しかし、アメリカおよび海外でいう「奨学金(スカラシップ)」とは「返済不要の給付型奨学金」を指し、日本のような「貸与型」ではないのだ。

そして「フルスカラシップ」というのは前出のエスカー監督がいうように、留学先大学での授業料はもちろん、住居費や食費も免除もしくは支給される制度である(それを今回の報道では各メディアが「全額奨学金」と直訳しているのだが、正直わかりにくい……)。

また、日本で奨学金というと、筆者の連載「奨学金借りたら人生こうなった」で紹介している事例のように、第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)のどちらかを借りたにせよ、社会人になって半年後には返済が始まるという制度である。

そんな中、最近は返済不要の「給付型奨学金」が増えているという例も、これまで取り上げてきたが、日本以外の国で奨学金というと、基本はこのことを指す。そのため、日本独自の「貸与型」の奨学金を外国人に説明する際、「意味がわからない」と言われたこともあるそうだ。

国によって大きく異なる「奨学金」制度。そこで、本稿ではこれまで筆者が取材してきた中で、スカラシップを利用した者たちの話を振り返りながら、海外と日本の奨学金制度の違いについて解説していきたい。

「アメリカの大学にフルスカラシップで留学」とは?

筆者は野球に関する知識は皆無だが、今回のアメリカのフルスカラシップ制度を説明するうえでは、「ジャズ」を例に出すのがわかりやすい。

かつて、日本人が「アメリカの大学にフルスカラシップで留学」するケースといえば、サックス奏者・渡辺貞夫氏に代表されるような、マサチューセッツ州のボストンにある「バークリー音楽大学」への留学が有名である。

そんな彼を導いたのが、現在94歳の現役ジャズ・ピアニストである秋吉敏子氏。彼女は1956年に日本人として初めて同校に奨学生として入学した。

もともと同じカルテットで演奏していた2人だが、先に留学していた秋吉氏に「私がフルスカラシップ(全額奨学金)をとりつけてあげるから、あなたも留学なさい」と渡辺氏は声をかけられ、1962年にフルスカラシップで同校に留学を果たしたのだ。

以後、荒川康男、佐藤允彦、大西順子、大坂昌彦など、日本を代表するジャズ・ミュージシャンたちのほとんどが、スカラシップを獲得して同校に留学している。

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