佐々木麟太郎の「5000万円奨学金」に見る日米差 「日本と違って凄い!」…とは単純には言えない

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つい、先日「ARBAN」という音楽メディアで、90年代初頭にバークリー音楽大学にスカラシップを得て留学した、ジャズ・トランペット奏者の岡崎好朗氏に話を聞いたのだが、当時の状況について、次のように振り返っていた

「学費全額免除ではありませんが、8割は負担してもらえました。当時は円高で、しかもアメリカも物価が安かったため、学費も1年間で2学期分のセメスターを履修して6000ドル程度だったんですよ。当時の国内の音大は1年間で150万円はかかったのですが、1ドル=80円台だったため、半額以下で通えたわけです」

こうしたジャズミュージシャンたちや今回の佐々木内野手のように、その後の将来が約束されている人物に対して、アメリカの名門大学はスカラシップ制度で、才能のある者たちを国内外から呼び寄せてきた歴史があるのだ。

海外は日本の大学よりも学生へのサポートが手厚い

また、筆者が取材してきた人たちの証言を振り返っても、海外の大学や大学院は日本の大学よりも学生へのサポートが手厚いようにも思える。

例えば、「奨学金440万円」44歳彼が語る親世代への違和感」に登場してくれた、シンガポールの研究所での勤務歴のある船田亘さん(仮名・44歳)によると、海外では大学院生という存在は立派な「職業」として認められているという。

「日本でも、新卒の社会人は研修が多かったり、見習い的な扱いを受ける反面、給与はしっかり支給されますよね。それは、戦力になるまでの準備期間だと捉えられているからでしょう。海外では大学院生への見方もまさにそんな感じで、『専門家・研究者になるための見習い期間』と見なされている。だからこそ、給付型奨学金が支給されたり、学費や生活費を支援してもらえたりする。

こういう扱いを目にすると『海外の大学に進めばよかったな』と思うこともあります。日本では、研究者たちの研究活動が世の中にいかに貢献しているかという考え方が、他の国に比べて根付いていないですからです」

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