「皆婚→難婚→結婚不要」社会に至る深刻なワケ 結婚しない若者の増加は中高年世代に責任も

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コールセンターで非正規雇用として採用された人は、1年後も3年後も同じ仕事をしていますし、事務職員として採用された派遣社員は、3年後も事務職員として変化のない仕事に従事し、任期が終わると別の会社に派遣され、またイチから同種の仕事をさせられるのです。

コンビニやスーパーマーケット、居酒屋でサービス業に従事しているアルバイトも10円単位の昇給が精一杯、しかも勤続日数を重ねたところで正社員になれるわけでもありません。

新たなスキルアップをする機会を得られない非正規雇用者は、当然昇給とも昇進とも無縁です。日本社会が「格差社会」になったのは、このように昨年も今年も来年も、上昇していくことができない非正規雇用者を大量に生み出したことに、原因の一つがあるのです。

彼らは、ちょうど1997年に私が「パラサイト・シングル」と名付けた世代でもありました。当時、「成人しても、親と同居している独身者が1000万人」いる現実を知り、私は彼らを「寄生独身者」と称したのです。

もちろん当事者たちからは、「寄生だなんて、好きでしているわけではない」「悪意あるネーミングだ」と反論も受けましたが、まさに「好きでしているわけではない」のが重要なポイントでした。

近代社会のセオリーに従えば、成人して学卒後は親元を離れ独立するのが当然で、ヨーロッパやアメリカでもそれが常識ですが、バブル崩壊後の日本では、経済的事情から独立できない若者を大量発生させてしまったところに、超少子高齢社会日本の最初の躓きが隠されていました。

要するに「結婚し、子どもを複数産み育て、成人させるだけの経済的責任を負いかねる」若者が激増したことが、日本を「皆婚」社会から、「難婚」社会へと変えていったのです。

親世代とのあまりの違いに驚く

私はここ数年、大学の学生たちに、ある宿題を出しています。それは、「ご両親に、新社会人当時の話を聞いてきてください」というものです。

首をかしげながら帰宅する学生たちですが、翌週、一様にびっくりしたような顔でインタビュー結果を報告してきます。

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