日系企業を襲うアジアの賃金インフレ--放っておけばどんどん辞める!?
また、海外企業のアジア進出ラッシュによって実際に高度人材で労働需給が逼迫してきていることも問題です。特に「管理職」「専門技術職」では顕著に不足感が出てきています。こうした問題の行く末は、「法定最低賃金の改定」「公務員給与の大幅引き上げ」となって現れます。中国、インド、インドネシア、ベトナムなどでは、条件や自治体によって異なりますが、いずれも引き上げ率は2ケタとなっています。
--では、賃金インフレどうすればよいのでしょうか?
企業単位では、どうにもならないと言ったら厳しいですが、それが実情だと思います。ただ、対応を早くすることで余計なダメージを負わずに済みます。まず、物価上昇分に関して「上げる必要のある分」は上げなければいけません。放っておけば、どんどん辞めていきます。
中小企業庁の統計調査では、海外進出企業の「現地スタッフのモチベーションアップ施策」で最も効果が高いのは「賃金アップ」という結果が出ています。残念な気もしますが、考えれば当たり前かもしれません。「将来の夢より、来月の月給をくれ」ということです。短期志向なんですね。逆によく言われがちな「キャリアパスの明確化」などは効果が低いという結果が出ています。
まずは、普段からインフレ見通しを気にする。そして収支計画の労働コストをパッと見直して、機敏に対応することが重要かと思います。賃金インフレが起きているということは、従業員はますます強気になっているともいえます。この「勘違い」は離職率の上昇を引き起こします。
--社員が離職しないようにする、言い換えればモチベーションアップにはどうすればよいでしょうか?
アジアの国々、共通でみられることとして、まず、従業員はお互いの給与を知っているということです。給与明細の見せ合いをするんですね。もし、何かおかしいと感じると「なぜ同僚のあの人より給料が安いのでしょうか」と平気で聞いてきます。これには、評価方法をロジカルに説明できるようにしておく必要があります。