オムロン「純利益98%減」で社長が示唆した懸念 「顧客起点が薄まっている」という根深い問題

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ところが先述した理由で顧客からの受注が低迷。代理店で積み上がった在庫の消化はなかなか進まず、オムロンの売り上げにも響いた。代理店在庫の水準が正常化されるのは、2024年度の前半になると同社はみる。

こうした状況を踏まえ、オムロンは2023年10月からの2年間を構造改革期間と位置づけ、制御機器事業の立て直しに取り組むと表明した。ポートフォリオを見直し、特定の顧客や地域、製品への依存からの脱却を目指すという。

オムロンは2月26日、構造改革方針を発表した。制御機器事業を中心に収益を立て直し、ほかの事業も含めて成長基盤の再構築を図る。会社全体では固定費約300億円の圧縮も行い、国内外で合計2000人の人員を削減する方針だ。

制御機器以外の事業も環境は同じ

「顧客起点でのマネジメントや行動が薄まっている、という本質的な問題がある」

2月5日の決算説明会時、辻永社長は反省の弁をそう述べていた。社長就任後、現場の社員との対話や取引先への訪問を通して感じたそうだ。そして「制御機器以外の事業も置かれた環境は同じだ」と強調していた。

コロナ禍やサプライチェーンの混乱に見舞われた結果、自社内部の問題を解決するために人やお金を多く割くようになり、顧客に目が向かなくなっていたという。そのうえで辻永社長はこう力を込めた。

「一度リセットして業務内容を見直し、顧客に向いた仕事に傾注していく必要がある。現場任せにはしない。全社が一丸となり、評価や投資の基準も定めてガバナンスのチェンジに取り組んでいく」

オムロンでは昨年、辻永社長の就任と同時に立石文雄会長が名誉顧問に退いた。その結果、創業家出身の取締役が1933年の設立から初めていなくなった。次代を担う辻永社長にとって、経営手腕が問われる局面だ。

石川 陽一 東洋経済 記者

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いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

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