オムロン「純利益98%減」で社長が示唆した懸念 「顧客起点が薄まっている」という根深い問題

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今年度、足を引っ張っているのが、この制御機器だ。同事業の営業利益は年度初めの時点で880億円と増益を見込んでいたが、逆に約8割減益の140億円となる。

大幅な採算悪化の原因について辻永社長は、「ボラティリティ(価格変動)の高いデジタル、環境モビリティ業界に加え、中国市場の投資需要に依存している」との分析を示した。

オムロンのIR担当者も「戦略的に業界のトップメーカーを押さえることに注力してきた。それが今は裏目に出ている」と話す。具体的には、半導体関連やEV(電気自動車)向け二次電池の設備投資に関わる受注において、一部の大口顧客に依存する割合が高いのだ。

オムロンの2023年度の営業利益予想

「両刃の剣」だった大口顧客依存

制御機器事業部は近年、製品とソフトウェアを組み合わせて顧客に提案するという高付加価値化に力を入れてきた。顧客の課題を基にAI(人工知能)などを活用して、自動化を一段と進化させる新たなアプリケーションを生み出してきた。

一方、こうした高度で複雑なシステムを生産ラインに必要とする企業は、業界の最先端を走る大手に偏りがちだ。そこに深く食い込んでいれば、取引先が好調な時は流れに乗って数字を伸ばせる。

ただ、顧客の偏りは「両刃の剣」でもある。

実際、新型コロナ禍が一段落した2020年度以降、オムロンは右肩上がりで業績を拡大していた。半導体やEV関連などでの旺盛な生産能力増強の需要をうまく取り込み、成長の糧としてきたのだ。

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