特に勉強に対する劣等意識が強い子の場合、自分の言葉で自分を追い込んでいくということがあります。人は一般的にマイナスのことはすぐに受け入れるが、プラスのことはなかなか信用せずに時間がかかるという傾向があるため、その状態を変えるのに時間がかかります。私の経験では、マイナスレベルが浅ければ、1回の授業で変えられますが、深いと3カ月はかかります。
親が使う言葉を子どもも使ってしまう
マイナスレベルが深い子はなぜそんなに深いのだろうかと思っていたところ、驚くことがありました。それは保護者面談をしていたときでした。
保護者:ええ。裕子は小学校の頃から算数ができない子なので、中学に上がってからも数学は家で勉強しませんね。あの子は私に似て、計算も遅いし、やっぱり遺伝的に嫌いなのでしょうね(笑)。
私:裕子さんは、よく「数学は嫌い!」という言葉を発していますね。家でもそのような発言はあるのですか。
保護者:テスト前になるといつも言っています。私も数学は嫌いだったので、気持ちはわかります。それではいけないとも思っているのですが……。
私:裕子さんの場合、まず『数学が嫌い』というネガティブな発言を消すことから始める必要がありそうですね。言葉というものはよい悪いにかかわらず、行動に影響を与えるので、結構、怖いものなのです。
保護者:そう言われれば、私も娘にネガティブな言葉をずいぶん言っていたように思います。特に数学に関しては『あなたは数学ができないね』という言葉を使っています。
私:まず、家庭でもそこから変えていきましょう!決めつけることをやめ、言葉の種類を変えていきませんか。
保護者:わかりました。家庭でもそのようにしていきます。ありがとうございます。
保護者面談をしていると、話し方やしぐさ、言葉の種類や価値観が親子でよく似ているなという印象を持つことがよくあります。特に、子どもが普段使っている言葉の種類は、親御さんが使っている言葉の種類と同じということがわかったのです。子どもが「私は勉強が苦手だから」と言っているとき、その親御さんも家庭で「あなたは勉強が苦手だから」と言っていることが実に多いのです。
さらに勉強ができない子の中には、小さい頃から、親に「お前は、勉強は無理」「頭が悪い」「お前はバカだ」「鈍い」「のろま」など否定的な言葉を言われ続けてきた子もいました。親は何気なくこのような言葉を使っているのでしょうが、多感な時期に強烈な刺激となって子どもの心に突き刺さっているということに、気づいていなかったようです。
私たちは日頃、言葉を無意識に使っていますが、少し意識して使うだけでも違いますし、何よりも発している本人の行動が変わってきます。ポジティブな言葉を発するたびに、本人の耳に入っているためです。私は、自分も含め、人を指導する立場にある人には、いつも次のように語っています。
「人の心や体を傷つけたり、人の道に反したりした場合は、徹底してしからなければなりません。しかし、日頃は人を元気にさせる言葉、勇気を与える言葉をかける癖をつけるようにしましょう。希望があるかないかで、人は変わります」
ご家庭においても、参考にしていただければ幸いです。
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