キューバ「オーガニック大国」になった意外な経緯 大国に振り回される中、たどりついた農業

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つまり、有機肥料を使い、無農薬無化学肥料のオーガニック農業だ。その上トラクターも使わないのだから、自然農法に近くすらある。何がすごいって、これが「一部のこだわり農家の話」ではなく、農業のスタンダードとして広く行われているのだ。その仕組みやノウハウを知りたくて、ヨーロッパから視察に来る人もしばしばいるのだという。

食料確保が課題の国で、オーガニック農業とは、いったいどういうことだろうか。そんな余裕が、あるのだろうか。キューバ式オーガニック農業の成り立ちを紐解くために、歴史を見てみよう。

キューバ式オーガニック農業にたどり着くまで

大航海時代以降、スペインによる植民地支配を受けてきたキューバは、奴隷制度とプランテーションの下で砂糖産業を発展させた。世界の流通量の4分の1を占める大生産国になる一方、砂糖依存の一本足打法的な経済にもなっていった。

1800年代になると、中南米地域一体で独立の機運が高まり、1902年にはキューバも独立。ただし実質的にはアメリカの保護国という扱いで、アメリカの支配するサトウキビ産業への依存はますます高まっていった。

富の流出はすさまじく、1927年には、175ある精糖工場のうち75がアメリカ資本で経営され、その生産量は全体の62.5%を占めるまでになっていた)。親米政権への不満が高まり、1959年にカストロが指導者となりキューバ革命勃発。ここで活躍したのが、アルゼンチン出身のチェ・ゲバラだった。ゲリラ軍を率いて政府軍を制圧し、革命成就の英雄となった。

さて、ここからが大変。キューバ革命を経て誕生したカストロ政権は、アメリカの資本であったサトウキビ農園や精糖工場を没収して国有化する方針を発表したのだが、アメリカは当然そうさせたくない。キューバの砂糖産業から今まで得ていた巨大な利益を失うことになるからだ。

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