キューバ「オーガニック大国」になった意外な経緯 大国に振り回される中、たどりついた農業
日本人にとって馴染みのある土地でも、旅行ランキング上位に上がってくる国でもないけれど、一部の旅人にとっては憧れの場所で、「古き良き」という枕詞をつけてしばしば語られる。クラシックカーにコロニアル建築にチェ・ゲバラ、というのがその人たちの口から出てくる言葉だ。
私がこの国を訪れたのは、2018年秋。そんなのは作られたイメージだろうと思っていたのだが、首都ハバナの市街を歩くと、本当に1950年代のクラシックカーが走り、パステルカラーのコロニアル調の建物が並んでいた。
70年前で時が止まったような風景は、つい写真に収めたくなる。その中を歩いていると、ブロック塀の落書きやみやげもの屋で革命家のチェ・ゲバラの顔を見る。高校の社会科の教科書で見かけたようなおぼろげな記憶しかないけれど、ここが彼の土地だったか。
2週間家庭に滞在して見えた「台所事情」
家庭の台所に入ってみると、憧れだけでは済まない一面も見えてくる。2週間ほど家庭に滞在しながら生活していて印象に残っているのは、「物がない」という状況だ。
最初にお世話になった家庭のマリリザさんは、家政婦として働きながら、高齢の母の世話をしている。彼女にくっついて市場に買い物に行った。市場といってもさほど広いわけではなく、豆とキャッサバ芋と数種類の野菜だけが売られていて小さな直売所のような雰囲気だ。
マリリザは、オクラを握って念入りに硬さを確かめながら選び、インゲン豆も買って、アボカドに手を伸ばしたが「ものがよくないのに高い」と言って顔をしかめた。
次の市場でアボカドを探すも、硬くて小さいと素通りし、3軒目に行った少し高級そうな市場でようやくお眼鏡にかなうものを発見。「少し高いけれど、あなたにいいものを食べさせたいからね」と言って、慎重に選んだ1つを買ってくれた。
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