ハイアールの液晶冷蔵庫を生んだ"三洋魂" 透明な洗濯機も登場、独創性で再起かける

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帰りが夜遅い夫へ、夕飯のメッセージも残せる

何も家電量販店で売るだけが、販売ではないだろう――。伊藤社長は、冷蔵庫としてではなく、冷蔵機能付きのディスプレイとして見ろと社員に促した。屋外の広告、オフィス、レストラン……。見えてきたのは法人向け(BtoB)の販路だ。

法人向けだけではない。個人用であっても、ディスプレイ上のアプリからサービスごとに課金すれば、製品価格は、そこまで高く設定しなくてもよい。

「DIGIは新しいコミュニケーションのプラットフォーム。販路も制約なしで考えている」と、デジタルデバイスグループの榊英巳ディレクターは強調する。

開発を支えた”屈辱の日々”

開発陣が新製品にかける意気込みは大きいが、白モノ家電の常識が通じない伊藤社長とのやり取りではハレーションもあったようだ。しかし、ゼロベースでの思考に社員は次第に慣れていった。何より「三洋からハイアールに来て、悔しいからやってやろうという気持ちが強かった」と森田氏は語る。

実は熊谷市の研究開発拠点から、利根川を挟んだ向い側の群馬県邑楽郡大泉町には、旧三洋の冷蔵庫工場があった。HAの開発メンバーの多くが、かつて働いていた場所だ。この工場はいまパナソニックの大泉工場へと変わり、同社はここで作る業務用冷蔵庫をBtoBのコア商材と位置づけている。

今年2月に熊谷の拠点ができる以前は、現HAの冷蔵庫部隊約250人も、大泉工場に残って働いていた。しかし、三洋時代には全体が自社の敷地だった工場も、パナソニック傘下となると、敷地が区分けされ、HA社員は移動が一部に制限された。当時、群馬工場にいたHA社員にとっては「屈辱だった」(社員)。ようやく自前の研究開発拠点を得て、再挑戦の舞台が整った格好だ。

米アイロボット社のロボット掃除機、英ダイソン社が生んだサイクロン式掃除機や羽根なし扇風機……。家電売り場で目立つのは、外国勢が起こしたイノベーションだ。ただし、冷蔵庫、洗濯機、エアコンという白モノ家電の“本丸”では、いまだ日本企業の存在感が圧倒的。「外国勢にも大型白モノは攻略できない」というのが業界の通説だ。

そこに果敢に挑む中国資本のHAが、アイロボット社やダイソン社と違うのは、開発を担うのが、かつて家電市場で敗戦を喫した日本人技術者たちということだ。 “和製”イノベーションを起こせるのか。DIGIが発売されるのは2015年秋の予定だ。

(文中、榊氏の「榊」は正しくは「示」が「ネ」です。)

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