ハイアールの液晶冷蔵庫を生んだ"三洋魂" 透明な洗濯機も登場、独創性で再起かける

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DIGIの開発も、伊藤社長の一言から始まった。「冷蔵庫は1年中、24時間電源を切らず、ただ台所の隅でじっとしている。もっと変化するものにできないのか」。2014年春、開発メンバーが集うミーティングで疑問を投げかけた。

DIGI開発の中心メンバー。左から榊英巳氏、森田昌治氏、山岸貴尚氏。榊氏はJVCケンウッド出身、森田氏と山岸氏は三洋出身だ

「たしかに、使う人は冷蔵庫を買ってからも成長していくのに、冷蔵庫だけずっと同じ。もっと利用シーンに合わせて変えられないか、ということで、カバーをつけたらどうか、むしろディスプレイをつけては、などとアイデアを膨らませていった」。冷蔵庫部門を取り仕切る、森田昌治アクアコールドチェーンカンパニー社長はそう振り返る。

冷蔵庫は10年単位で使用する息の長い製品であるため、飽きないデザインが求められるというのが家電業界の常識。白、黒などのシンプルな単色で、形状も箱型という一律のデザインはそうして出来上がる。「でもその発想から離れ、あくまでゼロベースで考えた」(森田氏)。液晶パネル付冷蔵庫というアイデアはそうして生まれた。

斬新なアイデアがぶつかった、技術の壁

洗っている様子が見える不異議な洗濯機も、伊藤社長の「常識破り」から生まれた(撮影:大澤誠)

だが、その後に直面したのは技術的な課題だ。そもそも冷蔵庫は冷やす装置。一方の液晶パネルは放熱する部材。そのため、いかに熱を逃がすかが課題となった。

また重量という難題も出てきた。単純に液晶パネルをくっつけると、冷蔵庫の扉は通常の3倍の重さになる。購入者にとっては開閉時の負担が増え、重心がずれるため耐震上の問題も出てくる。

まずは、とにかく作ってみよう――。開発メンバーが最初に行ったのは、32インチのテレビを、冷蔵庫に直接貼り付けることだった。「そうしたらきれいにくっついて、意外とできるかもしれないと思った」。冷蔵庫商品開発グループの山岸貴尚シニアマネージャーはそう振り返る。

放熱については、小さな穴を開け空気を循環させるなどして解決。また重量についても、パネル周辺の部材を工夫するなどして、開閉や安全上の課題をクリアした。「それまでは無理と思い込んでしまっていただけ。実際に作ってみたら、意外とできるものだと実感した」と、担当者は口をそろえる。

開発の“これまでの常識”はこれでクリア。だが、次いで立ちはだかったのは、販売での“常識”だった。「最初は画面のついた冷蔵庫など売れないのではという思いも正直あった」と山岸氏は打ち明ける。そこでも議論の突破のきっかけとなったのは、伊藤社長の発想だった。

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