ハイアールの液晶冷蔵庫を生んだ"三洋魂" 透明な洗濯機も登場、独創性で再起かける
白モノ家電の世界最大手・中国ハイアールの傘下で、日本と東南アジア地区を統括するハイアールアジア(HA)。彼らが6月2日に発表した白モノ家電の新製品は、見た人の度肝を抜いた。映画のスター・ウォーズに登場するロボット「R2D2」型の冷蔵庫、スケルトンで洗浄の様子が見える洗濯機、水を使わずに服を除菌・消臭できる「衣類エアウォッシャー」……。いずれも、発想が家電の枠を超えている。
なかでも、独創品で勝負するHAの姿勢を象徴するのが、液晶パネル付冷蔵庫「DIGI」だ。冷蔵庫の上下の扉にアンドロイドOS搭載の液晶パネルが設置されており、手の動作によって、インターネット上で食材を購入したり、パネルに映る服を試着して注文したり、家族間で動画メッセージを交換したりと、さまざまなサービスを利用できる。
「冷蔵庫は冷やすだけ、という役割を終える」。新製品発表会でHAの伊藤嘉明社長はそう言い切った。
ベンチャー風オフィスには中高年ばかり
埼玉県熊谷市のJR熊谷駅から徒歩10分。ここに新型冷蔵庫を生んだHAの研究開発拠点がある。2015年3月に開所したばかりで、中に入ると、社員が特定の机を持たないフリーアドレスの真新しいフロアが広がっている。まるで若手ベンチャー企業のオフィスのようだ。
が、異なるのは従業員の年齢。白髪交じりの中高年が目立つのだ。それもそのはず、ここの従業員の多くは旧三洋電機の冷蔵庫の開発メンバーなのである。
三洋は白モノ家電部門をハイアールに買収され、その他の多くはパナソニックが引き取った。冷蔵庫事業については、業務用の大型冷蔵庫がパナソニックに、一般家庭用の冷蔵庫はハイアールに渡った。その部隊が、「DIGI」開発メンバーの大半を占める。
「冷蔵庫にディスプレイなどつけて、売れるわけがない」。国内大手家電メーカーの幹部は冷ややかだ。しかし、出してみないと売れるかどうかは分からない。そうした新発想でのチャレンジを、国内勢が積極的に仕掛けてこなかったのも事実だ。ではどうやって、HAはこの独創的な製品を生み出したのか。
きっかけは、2014年2月の伊藤社長の就任だった。伊藤社長はタイで育ち、米国の大学を卒業後、日本コカ・コーラやデル、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントなど複数の業種を渡り歩いた異色経営者。白モノ家電業界では「よそ者」を自認する。その、よそ者ならではの視点で、新製品開発をリードしている。
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