"脱造船"で復活、三井E&S「クレーン事業」の凄み 港湾クレーンで世界シェア2位、脱炭素で受注増

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アメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルス港やロングビーチ港では「クリーンアクションプラン」が策定され、2030年までに港内のすべての設備で「ゼロエミッション」が義務づけられている。

トランスファークレーンは「ゼロエミッション」への転換が進む(写真:三井E&S)

三井E&SのRTGも約100基稼働しており、この動力を水素燃料電池に置き換えようとしている。第1弾として2024年6月までに世界初となる港湾での水素燃料電池式の実証運転を行う計画だ。

国内でも東京都が港湾設備の脱炭素化を計画していて、2024年度には大井埠頭で水素燃料電池式のクレーンを1基、実証のために稼働させることにしている。

成長事業推進事業部の高橋正浩水素バリューチェーンチーム長は、「一般的に水素は燃料消費量の問題でたくさんの水素タンクと電池を置くスペースが必要になる。一方、われわれのクレーンでは最適な寸法、連続使用時間のバランスで機構をコンパクトにパッケージ化できているのが最大の特長」と話す。

ベトナムでは30基のクレーンを一気に受注

こうした脱炭素関連の高い技術力が世界で評価され、ベトナムでは30基のクレーンを一気に受注するなど、大型案件の獲得も進む。

三井E&Sは今後、港湾クレーンや舶用エンジンの旺盛な更新需要やアフターサービス、産業機械の脱炭素関連需要の新規開拓で成長戦略を描く。

高橋社長は、「船の大型化やクレーンの脱炭素化に伴って更新需要は今後10年堅調に推移する。SAF(次世代航空燃料)や水素の製造プラントでコンプレッサーや圧力容器への需要もある。2024年は反転攻勢へのステップを確かなものとしたい」と語る。

造船から発展した「オンリーワン」の技術が、荒波の後の羅針盤となっている。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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